人形

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人形

その日僕は、いつも通りバス停から家までの道を歩いていました。乾いた風が木々の葉を揺らす音だけが微かに聞こえる、人通りの少ない道です。その日は友達と通話を繋いで遊ぶ約束をしていたので、少し足早にその道を歩いていました。

そんな僕の足を止めたのは、道の脇に無造作に捨てられた、1つの人形でした。片手で掴めるほどの大きさの女の子の人形で、自分が捨てられていることなんて知らないかのように不気味に笑っていました。人形の手には、何やら紙が握られています。僕はその人形を拾い上げ、紙を開きました。その紙には、こんなことが書かれていました。

「これは、呪いの人形です。この人形に人の名前を書くと、この人形にしたことと同じことがその人にも起こります。」

僕は、思わず鼻で笑いました。使い古されたネタのしょーもないイタズラだな、と思いました。しかし、1度拾い上げた人形をもう一度戻すのは、自分がこのイタズラを仕掛けているようで嫌でした。今日の通話のネタにしよう、くらいの軽い気持ちで、僕はそれを持ち帰りました。

家に着くともう約束の時間になっていたので、急いで通話を繋げました。その友達とは高校に入ってすぐ仲良くなりましたが、家が遠かったので通話を繋いで遊ぶということをよくやっていました。

「わりいわりい、遅れた」

「遅せぇよ~、何やってたの?」

「いや、それがさぁ」

僕は拾った人形について友達に話しました。

「なんだよそれ、くだらないイタズラだなw てかなんで持って帰ってきたんだよw」

「いや、お前の名前書いてやろうと思ってさ」

「やめろよw」

僕はその場の軽いノリで、人形に友達の名前を書きました。

「書いたよ」

「やめろってw」

「ちょっと人形の肩軽く叩いみるね」

僕は、その人形の肩を軽く叩きました。

「えっ、マジで今叩かれた感触あったんだけど」

「からかうなよw」

「いや、マジだって」

「そういうのいいから」

「え、でも…」

少しの沈黙が、僕たちの間に流れました。

「ま、まあ気のせいかな」

友達の声は明らかに引きつっていました。僕はまさか、と思いましたが、まだ信じることはできていませんでした。

「じゃあ次はさ、人形のどこを触るか言わないから、どこ触ったか当ててみてよ」

「わ、わかった…」

僕は、人形の左膝をそっと触りました。

「え、もしかして左の膝触った?」

「あ、合ってる…」

「嘘だろ…」

「い、いやきっと偶然だよ」

内心ではこの人形が本物の呪いの人形であることに気づいていましたが、そんな恐ろしい事実を信じたくない自分もいました。

「もう1回試してみようよ。次は違う場所触るからさ。」

「う、うん…」

僕は、人形の頭を触ることにしました。人形は相変わらず不気味な笑みを浮かべています。僕は、震える手で恐る恐る人形の頭を触りました。


その人形の頭は、いとも簡単に胴体から外れ、床に転がっていきました。

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人形 rion @rion1839

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