空から降りたる未知なる光

砂漠の使徒

ある日記より

 その日記の最後は、こう締められている。


『今日私が経験したことは、生涯忘れることのできない記憶として残り続けるだろう。』


――――――――――――――――――――


13年3月12日 晴れ


 我が軍は西の渓谷を抜け、敵の陣地に近づく。今は日の出前。敵も油断している頃合いだろう。攻めるなら今しかない。最終準備を終えしだい、攻め込む。この戦いが終われば……


(中略)


 予想通りだ。警備が手薄で、たやすく攻め入ることができた。このまま順調に進めば、敵の将軍を討ち取るのも時間の問題だ。次にこれを書くときは……


(中略)


 予定変更。城に入る直前、謎の光が城を覆った。見たところ、空から降り注いでいる。数分後、消え去る。念のため、しばらく時間を置くことにする。その間、兵の装備を……


(中略)


 中に入るも、誰もおらず。あるのは白骨死体のみ。詳しく見ると、こいつらの持つ刀は錆だらけだ。腐っているのは、人間のみに非ず。食糧も食べられる状態ではなかった。あとは……


(中略)


 最上階にて、敵の将軍を見つけた。もちろん骸骨になっているが。装飾品から見て、おそらく目的の人物だ。私は、壺に頭を入れる。思いの外、あっけなく終わってしまったが帰還する。この出来事を……


(中略)


 道中にて、先ほどの光が再び現れる。後方からの接近ゆえ、気づくのが遅れる。兵の半分が光の中に入り、消えてなくなった。思わぬ損失だ。それにしても、あの光はなんだろうか。これも敵の攻撃だとでも……


(中略)


 今度は、前方に現れた。我々は停滞し、様子を見る。すると、光の中から何者かが出現した。そいつは、奇妙な出で立ちをしていて、話しかけてきた。知らない言葉だ。なんのために……


(中略)


 記憶がない。今日決行予定の作戦はどうなったのだろうか。どのみち今は夕方。作戦は失敗であろう。なぜか大幅に減っている兵と共に、帰る。はたして、なにが……


(中略)


 どうやら作戦は成功していたらしい。私の持つ壺には、きちんと首が入っていた。こんなものを入れた記憶はないのだが。そして、記憶がないといえばまだ奇妙なことがある。この日記である。書いた覚えのないことが書かれている。一体いつ……


(中略)


 そうだ、思い出したぞ。あのあと光の中に入った。あの中は、不思議な部屋に通じていた。どこもかしこも銀色で、人間さえも銀の服を着ていた。そいつが右手に持ったなにかを私に向けた瞬間、意識が途切れたのだ。きっとあれこそが、記憶喪失の原因なり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空から降りたる未知なる光 砂漠の使徒 @461kuma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ