こちらは「御伽之雑草紙【おとぎのざつぞうし】」のスピンオフとなります。
葛籠を背負って旅をする忌み子の法師、空也と、彼に恋をする白クジラ真珠のお話です。真っ白な体で生まれた白きクジラは仲間達から「しろんぼ」と呼ばれ、ひとりぼっちで生きてきました。そんな中で出会ったのは、自分と同じく真っ白な白子の法師、空也。二人は心を通わせ、真珠は彼に想いを寄せるようになります。
ですが、所詮は地に生きる人と海に生きるクジラという関係。どんなに想っても叶わない真珠の切ない恋心がヒシヒシと胸に伝わってきます。それでもやはり好きな人と会う時間は特別なもの。彼からの別嬪という言葉に嬉しくなったり、からかう葛籠にムッとしたり。クジラと言えどもその心は純真な可愛らしい恋する乙女です。
ですが、そんな真珠の気持ちを利用するかのように唆す狐の姿が…
真珠が想いを遂げるには、人魚の涙という秘薬が必要。それを飲めば人間になれるけれど、代わりに声を失い、そして想いが通じなければ泡になって消えてしまうというもの。
真珠の出した答えとは。
愛らしい白クジラが抱く、切なくも強い恋心をぜひ感じ取って頂きたい物語です。