第5話

右肩が,じんわり温かかった.

「いいよ~.

京ちゃん待っててくれて,ありがとぅ.

嬉しかったよっ.」

後ろを振り返ったら…

京ちゃんのどこかホッとしてる笑顔に出会えた.


京ちゃん,どっちの人なんだろう…


いや…

進む方向もそうなんだけど,

進む方向…

私,

気にしてもいいのかな.

私も行きたい方向があって,

京ちゃんも行く方向があって.

すり合わせて行けるのかな.

同じ所だけ一緒にする.

それだけの時間の使い方しか出来ない?


ぼんやり考えてたら,

京ちゃんはイヤホン装着してた.

ねぇ,

話するとか一切ない訳なの~?


京ちゃんは,

馬鹿な優等生だ.


もう,知らない.

ずんずん私が行くべき方向へ行こう.


いなくない?

後ろに…

何だったのよ.


私,

ここ真っ直ぐ降りて,

左に曲がる.

そして,お店によって帰る.

京ちゃんがいてもいなくても,

そうして思った通りにする.

別に変わらないし,

変えない.

それが,きっと一番楽で,

何も気にしなくていい.

傷付かなくて済む.




いつの間にか,

京ちゃんの気配を背後に感じた.


勢いよく振り返ったら,

物凄く堪えられなさそうに噴き出してた…


「なにっっっ?」


髪の毛を両手で触って,

両腕を上から片手でなぞって,

セーラーの襟,

リュックの紐,

リュック届く範囲触って…


プリーツを腰から裾に向けて

確認して気がついた…


バカだ,これ.

別名センダングサ…


むかつく~.

これ,取ってきたの…


「何で,こんな意地悪するのっ!

これ,緑のは簡単に取れるけど…

黒い細長いの,かなりめんどい事になるのに!」


たくさん投げたのか,

靴下にまで,

とばっちりが届いてた.


「元気出た?」

笑いながら言う京ちゃんが,

かなり…

だいぶむかついた.


「出ないっ!

これ,私面白くないから!

本当に.

絶対しないで!」


黄色い花が咲いた後,

緑のくっつく塊になって,

時間が経てば,

弾けて爆発して,

細かい凶器じみた種になる.

狂気じみた種は,

あちこちに飛んでいき,

根を生やす.

あぁ,狂おしい.

おかしな,

でも,確かな,

理にかなった生態.


「京ちゃん.

これじゃ,私…

元気でないよ?」


「うん.

何か,今,分かった.」


「次は本当に,

絶対絶対絶対しないでね?」


「うん.

もう,しない.」


私…

急ぐんだけどな.


プリーツ後ろを前に持ってきて,

緑の種を急いで取って,

細長いものは…

紺のプリーツに同化してるから,

このまま行こうかなと思う.


靴下の分,

取って置こうとしゃがむと,

京ちゃんも

「手伝うよ.」

って言ってしゃがんだ.


顔近いし…

スカートの中は

ハーフパンツだから大丈夫かな.


靴下につく凶器じみた種.

同じ場所が気になったのか,

手が触れた.

そこから通電した豆電球の気持ちになって,

乾電池の京ちゃんが見られなかった.

いつも私だけ振り回される.

あなたが私に狂えばいいのに.
















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寝る子は育つ姫 食連星 @kakumi

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