第5話 信用とエルナの事情
「気になってたんだがエルナさんとギリアムは何で戦ってたの?」
僕とギリアムはエルナさんとは別行動をしていて、エルナさんはツツの実を取りに行っている。僕達は今、エルナさんのテントがある湖に向かってる。
「うーん・・気になります?」
「うん」
「少し長くなりますが・・・分かりました。
まず俺達、つまり俺と姉さんは東の『魔王の島』という島に産まれました・・・・」
ギリアムの話はこういう話だった。
お父さんが人間でお母さんがエルフだった。
お父さんは魔王の島に住んでいたらしく、そこでお母さんと出会い結婚した。
ただ魔人と人間が結婚したことでお母さんとお父さんの寿命が3年になり、子供が生まれた時にはもう2年しか寿命がなかった。
そこでとある人に出会い、エルナとギリアムをその人に預けた。
たが、エルナは生まれてすぐに自我があった為お父さんとお母さんから離れなかったという。しかも魔物の本能が少しでもあるのか、人間であるギリアムを殺そうとしたらしい。だからエルナだけお父さんとお母さんに返したと言う。
それから親が亡くなりずっと1人で暮らしていたらしいが、ギリアムと再会し、また襲おうとした。また本能のまま殺そうとしていたのだ。だがそれは叶う事はなかった。ギリアムが首に掛けてたネックレスを外しエルナに掛けたのだ。
その瞬間エルナは苦しみ始めた。本能を抑え込むネックレスだった。
勿論外そうともしたらしい。だがピッタリはまっていて外せなかった。
・・エルナがつける為に作られたみたいに。
それからは2人とも別々に暮らして、ギリアムは姉に襲われそうになった事を人に話したら『魔物狩りのチームに入らないか』と言われ何を思ったのかチームに入った。
そこからは死に物狂いで強くなり、もう姉の事なんか頭になかった。
気付いたらチームのリーダーになっており、ギルドにも認められていた。
そして4メートルの怪物が出たから調査と討伐という事で向かっている最中に魔人のオーラを感じ、前をみるとエルナがいた。
姉のことは忘れていたから討伐という事で倒そうとした所、戦っている最中に段々姉のことを思い出し、確信したのは弾丸をリファエルが食べた瞬間、姉の首飾りが自分が無理やり付けたのと同じ事に気づいたらしい。それと同時に負けた事が無いせいか、リファエルの圧倒的な強さに惚れた。そして配下になりたいと言った。
・・・と言うのが真相らしい。
ここまで説明しているとエルナが丁度帰ってきた。
「これがツツの実?」
「そうだよ!遅くなってごめんなさいね。で、何話してたの?」
「何で戦ってるかを聞いていたの」
「ふぅん・・・そんなに簡単に話しちゃたんだ?」
「えっ!?話しちゃダメだったのか?」
「・・・・」
「うーん話したらダメ・・・とまではいかないけど、ギーちゃんはエルナを信用したから説明したの?」
「・・・えぇ。信用しましたよ、・・・だから話したんですよ」
「?」
「あの短時間で?あまり詳しくエルナに知られると困るのよね」
「大丈夫ですよ、言ったじゃないですか、信用したって」
「??」
「そう・・・分かったわ、確かに信用は出来る。だけどやっぱり喋りすぎじゃないじゃないかしら?」
「だからこそ「ちょっと!!僕にも分かるように話して!!!」・・・・す、すいません?」
「あー・・・ごめんね?朝ごはん食べましょうか」
「う、うん」
ツツの実は意外と美味しい。
だが、あまり味が感じない。
その原因は目の前のエルナとギリアムだった。
2人が睨み合っているように見える。
いや、睨み合っているのだろう。その証拠に殺気が漏れ出ているのだ。
(怖い!!!)
リファエルがこう思うのも無理はなかった。
ギリアムの事は怖いとは思っていないが、エルナの怒った顔、否。
怒っているのかも分からない歪んだ顔が悪魔に思えたのだ。
リファエルの手は震えていた。
それをシストは補佐した、だから外見は何食わぬ顔でご飯--もといツツの実を食べているのだ。
シストは思考した、エルナと行動するのは危険だと。
ギリアムの話を聞いてエルナの首飾りが壊れたら今人間に擬態しているマスターに襲いかかる可能性があると判断したからだ。
首飾りを解析しないと分からないが、見た通りであればあと3年程度で壊れる可能性が高い。
--本当は今すぐにでもオートモードにし、別の所へと飛んで行きたい。
だが今、リファエルの補佐。・・・マスターが言うにはサポート役との事、ともかくそれは置いといて補佐に付いたからには勝手に行動できない。否、出来るのだがそれはこの世界のルールに反する。つまりこの世界からマスターと私が追放される可能性が高い。なのであまり自由行動は許されない。
だったらせめてエルナが危険だと遠回しで伝えよう。とシストは思っていた。
・・・だがその考えは後から後悔する事になるのだがその事はまだリファエルもシストも知らない。
「あの・・・2人とも食べ終わった?」
振り絞って声を出したから女の子っぽい声になってしまった。
(完璧?な女の子です。でも心は男ですよ!)。
声を出した瞬間2人がピタリと硬直した。
「あ・・・えっと怖がらせちゃた?」
「ご、ごめんなさい・・・」
「いや、えっと、はい?」
・・何なんだろうこの張り付いたような空気、さっきのピリッとした怖い空気は無いけど何かビミョー。
「そういやあの4メートルぐらいあった怪物は?」
エルナがそう言ったとき、何となく最初に戦った魚が思いついた。
そういや4メートルぐらいあったなあの魚。
だからか知らないけど僕は魚の死体を指差し「えっあそこにある魚の事ですか?」と聞いてみた。
「はぁーー?!」
「ええ?!」
同時にギリアムとエルナが驚いたように叫んだ。
そんなに驚くものか?と思ったのだが・・・
「・・・あれは+Aランクも簡単に殺したって噂でね、私は討伐を任されてここに来たのよ」
「俺も同じく」
+Aって?とも思ったがそれはシストが答えてくれた
«+Aはランクです最低はFランク最高は+Sランクですね、あの魚は特Aみたいですね»
え、ヤバい奴じゃねーか!
よく倒したな。シストはやっぱ怖い。
«ありがとうございます»
・・・褒めて無いからね?
「所で2人はこれからどうするんですか?」
「私はギルドにその魚もっていかなきゃ行けないんだけどいいかしら?」
「うん!いいよ、で、ギリアムは?」
「俺は・・・組織としてはもう崩れ掛けてるし、ギルドにも見捨てられているので。
俺個人としてはリファエル様に着いていきます。よろしいでしょうか?」
「フッ、配下になったのならこき使うからね!覚悟しておくんだな!HAHAHA!」
«マスター流石に今のはダサいと思います。ギリアムにかける言葉はシンプルに『いいよ』で良かったのでは?ダサいです»
・・・シストは最近ハッキリ言う事を学んだよね、悲しいよ。。
«すみません、よく分かりません»
お馴染みのSiri化だね。
「あ!その前に渡したい物があるんだ!」
そうエルナが言いながらポケットに手を突っ込み、普通の鈴より一際大きな鈴を取り出した。
「これはね、付けると相手の位置が分かるようになる鈴なんだよ!そしてリファエルがもし死んだら鈴が壊れる代わりに私に死んだことが分かるようになるんだよ!結構お高いんだからね、大切にしてね!」
そう言いその青色のリボンが付いた鈴を僕に渡してきた。
それを僕は頭の方に付けた。
«ッ!貰ってはダメです!嫌な予感がします!»
え!もう付けちゃったよ!?
«今すぐにでも外してください!»
フンヌー!外れない・・・何で?!
「これ外れないんだけど!?」
「リファエルを主と決めたのね。その鈴にも意思があるのよ?」
「何でそれを言わなかったんですか!?姉さん!」
文句を言ったのは僕ではなくギリアムだった。
「その鈴は危険すぎて有名なんですよ!何でそれを持ってるんですか!?」
「えっちょ!」
「リファエル様!今すぐ何でも良いのでその鈴を取ってください!」
「何も無いけど?」
「へ?」
「何でそんなに焦ってるの?」
「いや、だって・・・」
「もーギーちゃんったら!そんな危険な鈴を私が持ってるハズないでしょ!」
「あの、話についていけないんだけど・・」
「あっ!ごめんね!ギーちゃんが言ってる鈴はこれの事よ」
そう言いエルナさんはまたポケットから禍々しい鈴を取った。
何だろう、禍々しいオーラが感じる。
この鈴に触れたら狂ってしまいそうな気がする。
「これはね封印の鈴って言って世界に2つしかない鈴なんだよね!
もう1つは消えたとか、隠されているとか。
これがそのもう1つなんだよ〜!
そのオーラに触れるだけでただの人間は即死とか♪」
僕は目を見開いたそのおかしな鈴をエルナさんは素手で触っているのだ。
「ね、姉さん・・・・もしかして」
そうギリアムが言ったと同時にエルナさんは楽しげな顔でその鈴に結ばれている赤色のリボンを解いた。
・・・赤色と言っていいのか分からない血より深い色の見ているだけで具合悪なりそうなぐらいの赤色だったが。
そしてそのまま僕の頭に付いてる青色のリボンと共にそのリボンを括り付けた。
その光景を呆然と僕達は見ていた。
本当は抵抗したかったのだが、そのエルナさんの表情のせいで抵抗出来なかった。
--余りにもその表情は狂っていたのだ。
まるで人を殺した後のような顔だった。
シストの警告が頭に鳴り響いていたような気がするがあまり意味はなかった。
「うんうん!似合ってるじゃない!ちょっと禍々し過ぎるから少しの間封印する必要があるね!」
そう言い僕の頭に手をかざした。
何か呪文が聞こえる。それをシストが解析してるのは言うまでも無い。
すると次の瞬間さっきの禍々しさは何だったのかというぐらいのサッパリとした空気に変わった。
そこで安心したのか僕は尻もちをついて倒れた。ギリアムも一緒らしい。いや正確には『リファエル様を守れなかった・・・ブツブツ』という感じにブツブツ喋っているので安心した訳じゃ無いみたい。
「あの・・・さっきのは?」
「大丈夫だよ。危険な人間、魔人が近ずかないようにしただけ!ね!」
そう言いながら僕の頭をわしゃわしゃと撫でてくれた。
その顔にはつい先程の虫を見るようなグロい笑顔は見受けられない。
また安心したのか涙が溢れ出てきた。
「そんなに怖かった?
1000年ぶりの人魚だからその辺の魔人より強いし大丈夫だと思ったんだけどね・・・」
「だ、大丈夫ですか!?痛いところありませんか!?」
何か凄く安心した気がする。
そう感じる程ここの雰囲気は先程のオーラと雰囲気が嘘のように暖かった。
何故だかそう思う程涙が溢れてくるのだ。
「グズッ!ありがどうッ!グスッ」
「声がおかしな事になってるわよ。暫く傍にいるから泣かないで、ね!」
「はい」
「姉さん、何であんな危険なものを持ってるんですか?何時から?何処で?そして何故リボンをリファエル様に?」
ギリアムが僕の気になっているところを簡単にまとめて言ってくれた。
「どこで見つけたのかは『無の島』で見つけたのよ。ほら、あそこ誰も行かないでしょう?だから何かあると思って向かってみたのそしたら予想どうりその鈴が砂漠の真ん中に合ってね。『無の島』が砂漠化してるのはあの鈴のせいだったんだなって気づいたのよ。で少しだけ鈴の性能を封印して持っていったのよ。質問は?」
「はい」
「リファエル」
「無の島とは?そして鈴の性能は?」
「えーとね『無の島』は西側にあるのよ。2000年前に砂漠化し始めて禍々しいオーラのせいで誰も入れなかったのよね。そして鈴の性能は普通の鈴は主と認めた人だけに手出すけしたり邪悪なオーラから主を守る為だけに行動するんだけど、封印の鈴は若干違うのよね。主を利用し、世界の消滅を望み、人の絶望の顔を見る為だけに行動する。この封印の鈴に認められる主は相当のバカか、悪魔をも超える性格の人だね!」
「へ、へー・・・」
僕はもう涙が引いていた。
聞いちゃいけないものを聞いたような気がする。
「あと何でリボンをリファエルにあげたのか?だね。
それはねリファエルが気に入ったから、かな?
可愛い妹みたいだし私も信用できると思ったし、何より・・・あの子に似ているからかな・・・」
「エルナさん?」
あの子って?分かんないけどエルナさんは他に深い事情があるかも知れない。
本人に直接聞くのは不味いかな?
「ううん、何でも!まぁそんなところかな」
「事情は分かりました。だけどこれからは辞めて下さい!とくにリファエル様は!」
「ハイハイごめんねー!」
「そろそろ行かないんですか?」
「あ!ヤバい!リファナに怒られる!じゃあね!我が弟くん!リファエルは困ったら連絡するのよ!」
「我が弟くんはやめてくださーーい!!」
「バイバイ!また連絡しますねーー!」
エルナさんが森の中に魚と道具を持って走った。
転ばないといいなーとそんなことを呑気に考えていると、
「よし、リファエル様。家を建てますよ」
そうギリアムが言ったのだ。
僕、人魚に転生しちゃいました! クロネコ @kuroneko-omiki
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