ラブコメ・恋愛短編集

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普通

俺は女に興味がなかった。小学校低学年、高学年、と同年代の友達が異性に興味を持ち始める時期になってもそれが変わることはなかった。

男友達の方が変に気を遣わなくてもいいし、楽だったからわざわざ面倒臭いことはしなくてもいい。俺はそう考え、女子との関わりを基本的に持たなかった。


女子に興味がなかった俺だが、中学生にもなると自然と話題が挙がる。自慰行為のネタ。自分が話題に入らなくても知識として入ってくる。俺はそれを見ても興奮しなかった。いや、正しくはできなかった。中学生の時期は他人と違うことを嫌がることが多い。俺もその一例。自分が周りと違うことにショックを受け、友達の何を言ってるか分からない言葉に相づちを打つことを欠かさなかった。違和感を感じ始めたのもその頃からだった気がする。


「お前、あの中沢エリナと付き合ってるんだって?」


「○○君ってさ、エリナのことどう思う?」


高校生になって、そういうのはより一層多くなった。客観的に見て、人より容姿が良い俺は、その当時女子のリーダー格の中沢エリナとくっつけられた。だいぶ無理矢理な形で。

本人たちにはその気がなくても周りの雰囲気で勝手にくっつけられる、なんてことは良くあることだ。それで関係を築けた人たちもいるのだから、一概に否定はできないが。


高校生になって初めてできた彼女は案外悪くなかった。話していて楽しいし、気楽に過ごせるし、一緒にいて落ち着く。女子を毛嫌いしていた自分を少し顧みた。


数回のデートを経て、互いの家を行き来するようになった頃。ついに時はきた。彼女から今日は親が帰ってこないと遠回しで伝えられた。男女が付き合うということはつまりこういうことだとは分かっていたから、不思議と驚きはなかった。


「○○君に脱がしてほしい」


と扇情的な表情でねだられた。

戸惑いながらもシャツのボタンを一つ一つ外す。未知の世界。そして、未知の世界のまた未知を知るために、ブラジャーを外した。


寒気がした。おぞましいものを見た気がした。顔が青ざめ、固まった。


それを見惚れていると勘違いしたのか、寝転んだ状態から俺の首に両手を回し、自らの顔に寄せた。そして口腔で舌を絡められた。

その瞬間、青ざめた顔が更に気色悪くなり、下から何か上がってくる感じがした。


「どうしたのっ...!?」


俺の顔色を見て驚くような、心配するような表情を浮かべる彼女に、


「ごめん。ちょっと気分悪くなった」


それだけを伝え、必死に口を両手で押さえながら、まだ慣れない長い廊下を進み、便所に駆け込んだ。

ひとしきり終えた後、彼女に家の用事があると伝え、足早に帰った。


彼女とのLINEには「ごめん」と一言。

何かを察した彼女は可愛らしいスタンプを一つ送ったきり、俺と関わることはなかった。


そして、俺もそれ以来、女の裸体を見ることはなかった。

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ラブコメ・恋愛短編集 sy @syoyu-0422

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