3部

懐かしいにおいがする。ああ、これか。昔懐かしメロンパンにも見劣りしない風格と味。最近はめったに見なくなった代物だ。


それはショーケースに入っているが匂いがふーんと漂っている。まだ9時だし今日はバイトでも行くか。会社は辞めてしまったし残高も下っていく一方。


ちょっとした社会復帰だとおもってやることにした。求人サイトからのメールを確認すると「喫茶店ボロージャ」というところのウェイトレスらしい、


サイトで見ると店の雰囲気も良いし給料だって悪くない。料理はできないが計算やメモくらいはできるだろう。


最寄りが駅は「いすゞ駅」となっていて結構遠いが電車で行けば30分くらいだろう。「すこし早くいって印象を良くしよう。」


そんな思い付きで電車の切符を買い、ガヤガヤとうるさい改札を抜けるとビルに囲まれながら涼しい風が吹く構内で電車を待つ。


構内にはいろいろな人がいるサラリーマンやわざわざ休日をとって子供と遊びに来たお母さん。


ここにいる全員が各々の悩みや希望を持っていると考えると、私一人なんかと思えてくる。ピロロロロ、電車が来た合図だ。ローカル線だから人はあんまり乗らない。


車窓越しに見える彼らの顔は日光に照らされながらかと頬に影を落としている。いい席を取った。先程のメロンパンをバックから取り出す。


「お茶、お茶」あいにく持参していないので電車内の自動販売で済ます。茶を飲みながらのメロンパン程うまいものはないな。我ながら良いチョイスだった。


そう思う。「次は、いすゞ駅~いすゞ駅」くたびれ越えの車掌さんが次の駅を知らせている。袋やボトルをゴミ箱に入れ降り口に移動する。


「もしかして、ボロージャに来られた方ですか?」「え、はい。まあそうですけど」ちょっと曇り顔で答える


「ああ、そうですか。いい喫茶店ですからぜひ行ってみてください。ですけど働くのはちょっとやめといたほうがいいかもしれないですけど・・はは冗談ですよ」


「なんで私がそこへ向かうとわかったんです?」「だってここはたいしたものがありませんからね。特にオシャレしている女性は都会の人だから」


結構年をとっている癖に話し方が若者口調で腹が立つ。まあいいか。ドアが開き、先程の人に軽く挨拶をして改札を出る。


レンガ造りの構内は重厚感があって北欧感漂っている。切符販売機の横の地区マップを見ると喫茶店はもうすぐそこだ。


ステンドグラスの窓からは遠くに見える山々が霧に埋もれ出てを繰り返している。やっぱりサンダルで来たのが間違いだったかなあ~。


階段しかないこの駅に愚痴をこぼす。駅を抜けると、流れ星のオブジェを中心にベンチや街路樹が四方八方に伸びる形をしている広場が広がっている。


不気味に広場は、人もおらず閑散としている。4番街道と書かれている外路に沿って歩く「ボロージャ、ボロージャ」あった。


白樺づくりのウエスタンな店に、金縁に剥がれかけの文字でボロージャこう書かれている。


ドアを開けるとコーヒーと調味料のにおいに満ちた風がドアの隙間から抜ける。


カランカラン。ドア鈴の音が小さくなった。


☆~執筆者から~読んで下さり有難うございます。しばしの間お休みいたします☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いつも どもども @sosoalways

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ