2部
昨日は寝すぎてしまった。よほどメールのショックが心に響いたのであろう。自分でも気づかない苦しさに「眠る」という行為でしか抵抗できない自分を恨む。
穏やかに咲いているベランダのポピーは朝焼けに輝いていて実家の小さな絵画のような気がしてくる。今では買おうという欲望より昔を思い出すほうが多い。
やっと目が明けることができるくらいになってきた。百均の皿にコーンフレークを次いで配達牛乳をそそぐ、フレークに着色された牛乳はないかと不気味で食欲が失せる。
スプーンで適当にかき混ぜながらテレビの電源を付けた。「ニュースです。本日斎藤内閣が総辞職することとなりました、理由はやはり首相夫人のお茶会・・・」
最近しなくなったこの日課がこんなにつらいとは、人格や人間性、お金の指摘しかできない世論は、法よりも嫉妬や劣等感にまみれている気がする。
「そんな中でも不適合か・・・」シリアルのちょうどイチゴの部分を頬張りながら小さなテレビとふたりきり。
昔はテレビをつけていると一体感が生まれ楽しかったが今ではただ単に劣等感しか生まれない。大きく息を吸う。
「ごちそうさまでした。」誰もいないけど。こんな生活でも食器洗いはする。そこら辺のニートではない。ごもっとも元は「現役」社会人だぞ。
洗剤のにおいがする手をキッチンペーパーで 拭きながらベッドに横たわる。今日はどうしたものか・・貯金はなんとかしていたため暮らしてはいけるが楽しみがない。
あ、そうだ。今日をカレンダーで確認すると赤丸が今日の日付についているではないか。よし、行くか。久々に出る外はさっぱりわからんがまずは挑戦。
中学校の恩師に言われてきた言葉だ。服はリクルートスーツとパジャマくらいしかない。いっかこれで。
ひっかけたサンダルもちょっとした革細工で母からもらったものだ。重い扉をぐいっと開け、どこまでも続いていそうなマンションを歩く。
吹き抜けになっていてどこかでパンを焼くにおいが漂ってきている。「朝、八時過ぎのにおい~」どこかで聞いたイタリアの曲だが、結構日本の朝とマッチしていていい。
大きな戦艦みたいなマンションを抜け、大通りの出るとまだ朝なのか子供や学生はおらず、ただ満員電車のけたたましい金切声が聞こえてくる次第だ。
いちょうの遊歩道を歩いていると。あった「ライトノベル文庫館」。心を浮かせながらドアをたたくが反応はない、いつもは色々な人が集まる文庫館も見ないうちにすっかりすたれたのか・・。
確かにインターネットmapでは開店時間9時とでている。最近の経済動向であろうか。文学も政治に振り回されているのかもしれない。
ここまで来たし、手ぶらでで帰るわけにもいかずにコンビニによる。昔懐かしと書かれていて一目ぼれしたメロンパンを持ってうろついていると、
ツンとさすカツソースのにおい。へえ今でも売ってるんだ。懐かしい通学時代がスッと匂ってきそうだ。
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