第2話 新たな出会い

正門には新入生達が写真撮影のために賑わっていた。

  『県立城跡高等学校』

そう書かれた銘板の前にできている列を尻目に校門を跨いだ。


学校の敷地内に入るとすぐ右手にグラウンドが広がっている。サッカーゴールが2つ、そして、消えかかっている白線 それ以外には何も見当たらないごく普通のグラウンド。だが、周囲の賑わいと熱気もあり不思議と寂しげに感じる。それを補うように満開の桜の木々が花びらを散らしながらグラウンドを囲っている。


人の流れに身を任せて少し歩いていくと校舎が見えてきた。

久しぶりに見る校舎は不思議と懐かしく思わせてくる。受験の時は緊張していたので正直校舎を見ている余裕はなかった。

改めて見てみると校舎は少し古く歴史を感じさせられる。見た目はごく普通の校舎である。だが、これからここで3年間過ごすと思うとワクワクしてくる、大事な目的を忘れそうになる程だ。


「ゆう!!」


聞き覚えのある声が後方から聞こえてきた。

その声につられて後ろを振り返ると、大きな褐色の瞳が印象的な少年が満面の笑みでこちらに向かってくる。日の光に照らされた髪の毛が茶色く輝いている。


「よっすー!」


「おはよ」


自然と挨拶を交わした。


滝谷冬馬とは小学校からの付き合いだ。運動神経が良く、見た目もまあいい。欠点があるとすれば、バカなところだろう。


「今日ってさー昼までだろ?」


少し高めの声で顔を覗かせてきた。


「そうだよ」


「じゃー終わったら昼飯でも食い行かね?」


また笑みを浮かべてそう聞いてきた。


「いいね!」


つられて笑顔になりながらそう答えた。


そんな他愛のない会話をしながら歩いていると何やら前方に人だかりができている。


「なにあれ?」


少し考えてから何か閃いたように


「そういえば、靴箱にクラス分けの紙が貼ってあるとか書いてあったなー!俺らも見に行こうぜ!」


そう言うと滝谷は引き寄せられるように人だかりの方へ走っていった。



「何それ、1ミリも聞いてないんだけど、、」


少し不安になりながらそう呟くとすぐに滝谷の後を追った。


人が餌に群がる鯉のように集まってる。視線の先には、

大きな紙にゲシュタルト崩壊を起こしそうなくらいにぎっしりと文字が書かれていた。

この中から自分の名前を探すのは相当大変だ。

不思議と緊張しながら名前を探していると、


「ゆう!あった!」


滝谷が大声で言ってきた。


これだけ文字が並んでるのによく他人の名前を見つけれるな、果たして自分の名前は見つけたのかよ


そんなことを思ったが彼がそんなに早く俺の名前を見つけることができた理由がわかった。


「俺らクラス一緒だぞー!」


「まじか!」


先程から感じていた緊張は自然といつのまにか安堵に変わっていた。


「まじで良かったじゃん!これはまじで楽しみになってきた!」


滝谷は嬉しそうに笑っている。


「それな!はやく他のクラスメイトにも会いたいな」


喜びを隠しきれず恥ずかしながらはしゃいでしまった。


「新入生の方は体育館に入ってくださーーい」


俺たちの安堵し喜ぶ姿にはかまわず

係の人が催促するように呼びかけた。

その声につられて人だかりがばらけて行った。


「俺らも行こうぜー」


「おう」


そう言って歩き始めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やっぱ校長の話ってなげぇーんだな」


約束通り昼飯を食べに入ったファミレスで背伸びし肩をほぐすような動作をしながら滝谷が言ってきた。


「俺ほとんど最初から最後まで寝てたよ」


どこの時代にも「俺校長の話長すぎて寝てたわー」とか言う謎のマウントを取ってくる輩はいるものだ。だがこいつの場合はいたって真面目である。こいつはすでに有名になってしまった。


「お前はいびきをかきすぎだよ!?周りざわざわしてたぞ!」


もう少し気を張っとくもんだろ?普通は


「あの人いびきかいてたひとじゃない?」


「やばくない?」


うちの制服を着た3人組の女子がクスクス笑いながら話している。


「ほら、もう噂されてるよ」


コソコソ話している女子の方をチラリと見ながらそう言うと、思わず見惚れてしまう程美しい瞳と目が合った。

急いで目を逸らした。


「まぁ、校長が悪いんじゃね?ハハハッー」


滝谷は大声で笑っていた、周囲の注目を集めているのに気づかずに。


「お、おい、もうちょい声小さくしろよ、、」


何あれめちゃめちゃ可愛いじゃん、いや、美人なのか?まあよくわからんけどこれが一目惚れとか言うやつなのか?いや、気のせいだ、 よく見たらそこまでってパターンかもしれん、、


チラリとまた彼女を見る。


うん、気のせいじゃないな、


「おい!ちゃんと聞いてるか?」


滝谷が顔を覗き込む


「あ、聞いてなかった、なに?」


透き通るように綺麗な長髪の黒髪の彼女に見惚れながら返事をした。


「聞いとけよ!もういいよ!」


「なんだよそれ」


滝谷と笑い合いながらそういった。


3人組の女子はもう帰ったようだ、


「そろそろ帰るか」


「そうだな」


滝谷がそう返事をした。そして、帰路へ就く。

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普通に普通な佐藤君 @renren_220

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