第3話 禁断の扉の先は異空間
中3の夏頃からちょくちょくライブを観はじめ、高校生になりバイトするようになってからはその機会も増した。
高校生になった私は、月3〜4回ライブハウス通いをしていた。放課後、コインロッカーに制服を詰めて繰り出すわけだ。
都内の地理は各地のライブハウスを拠点に把握していたし、神奈川埼玉千葉あたりは駅名ではなくライブハウスの名前やイベント名で記憶していた。
そして相も変わらず振り回し生活を送っていたわけであるが、夜のライブハウスで振り回してたのは……頭と右腕。
ヘッドバンギング全盛の時代であった……かどうかは知らないが、とにかく私はバレーボールで鍛えた右腕を振り上げ、同じく鍛えた足腰・体幹・三半規管を活かし、頭をガンガン振って踊り狂っていた。ヒールを履いてどれだけヘドバンしても、決して足元は揺らがない。
余談だが、これは後の満員電車通勤にも大変役立つことになった。経験というのは何事も無駄にならない。
話を戻そう。
ライブの客はほぼ、女子。よって、長髪が多い。うら若き乙女たちが集団で髪を振り乱し身体を折って頭を振る様は、さながら新興宗教のようだった。ダンス系のバンドのライブでは、さしずめフロアいっぱいの人間フラワーロック。(フラワーロック、ご存知ですか?)
さて、そうこうするうち、私はとあるバンドに出会う。
バンド名は仮に『S』とする。この『S』が、ボンデージ系だったのだ。
『ボンデージ』って、なぁに?
そう首をかしげる清い方は、知らなくてよろしい。知らないままの方が良いことが、世の中にはあるのだ。
とはいえそれでは話が進まない。とりあえず、「にしOかすみこ」「ドロNジョ様」「レイザーラモ*HG」あたりの画像を検索してみれば、あるいはなんとなくイメージできるかもしれない。が、あまり深くは調べないように。検索履歴を親御さんが見たら、卒倒するかもしれません。
とにかく、『S』はなんかそんな感じのファッションを身に纏いライブをするバンドだった。
面積の狭い革の衣装に、妖艶なメイク。そして、演劇的要素のある完成度の高いステージ。
彼らは美しかった。4人中3人は、美しかった。あとの一人も個性的な、味のある人だった。
所詮高校生なので限界はあったが、私はできるだけ『S』のライブを観に行った。毎回のように
彼らのライブに通ううち、そこで友達もたくさんできた。高校生もいたが、多くは社会人の美しいお姉様がた。少数だが、お兄様やオネエ様もいらした。皆さま優しくていい匂いがして、よく可愛がってもらった。スタッフやメンバーとも、顔見知り程度にはなった。
客層もオシャレ寄りな『S』なので、ファッション系絡みのイベントにもちょこちょこ出演していた。その一環で、ボンデージ系のファッションイベントがあったのだ。
もちろん、私も観に行った。高校生なのに、チケットは普通に買えたし年齢確認もされずに入れた。時は平成。色々と緩い時代だったのだ。
会場はどこだったか……失念してしまったが、いかにも怪しい場所であった。映画に出てくる秘密クラブとかそんな感じ。年上のお姉様たちにくっついて、私はこわごわと入場した。
だが、会場の扉を開けて目に飛び込んできたのは、怪しいどころじゃない。とんでもない異空間であった。
私が開けたのは、禁断の扉だったのかもしれない。
はい、いよいよ次回、本物の鞭が登場しまーす。
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