DIRTY WARS

@dekai3

エロトーク1 見えざる脅威

~ DIRTY WARS ET1 ~


 遥か宇宙の彷徨、時の向こうの物語


 ある時、クソエボリューション共和国には混乱が渦巻いていた。

 勃興するウンダス文明星とフグリス・ヌーブラテス文明星雲との交易での課税の是非で意見が割れたのだ。


 両文明はどちらも急にムクムクと勃興を始めた文明であり、だからこそお互いの文明間では物品のフェラトレードが行われるべきだと共和国議会は強く舌戦していて、誰もがその提案自体には賛成していた。

 だが、片方に力入れをする議員達の醜い争いによって関税をどの程度にするかが定まらず、どれだけ時間が経っても決着はつかずじまいだった


 この議会の醜態に業を煮やしたのは実際に輸送・売買を行う通商連合であり、いつまでも決着が付かない話をするのならば我々の要望通りにしろと力業での事態解決を図る事になる。彼らは両文明の中継点である惑星ゲリーへの航路をウン宙戦艦で包囲し、共和国に関するウン宙船が通れない様に宙間封鎖してしまったのだ。


 この様な非常事態にあっても共和国議会は果てしない討議をただひり出すばかりで進展せず、共和国最高議長はウン争解決のためにと秘密裏に便器と性技の守護者のディッキー騎士2人を特使としてゲリーへ派遣した。だが、特使の二人はゲリー到着前に謎のウンドロイドに襲われ消息不明になってしまう。


 決着が付かない議会の内容と合わせ、最高議長による無断での特使の派遣と特使の消息不明からクソエボリューション共和国議会は共和国に属する星々の裁定権を失い、世は正に『汚い宇宙戦争ダーティ・ウォーズ』時代へと突入したのだった。






◎◎◎






「ハイッベン砲、拡散モードで起動、撃てぇ!!」


ブリュブリュリュ ブバッボゥ


 ウンダス文明星宇宙軍のアンザン型戦艦の中心部から、円錐状に広がる様に茶色いゲル状のエネルギー波が飛び出した。

 これはウンダス文明の名前を関したウンダスエネルギーを応用した兵器であり、惑星ゲリーの航路を挟んで反対側に位置するフグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍の戦艦群へと襲い掛かる。


「フグリ型戦艦は全艦最大出力でフロムス・アクト・スキンを発動! 双丘型戦艦はフグリ戦艦の後ろに隠れろ!!」


 フグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍は放たれた主砲に反応し、全てのフグリ型戦艦にフロムス・アクト・スキンを被せる様に指示を出す。フロムス・アクト・スキンは一度使用したら再利用は不可能な防護膜だが、ほぼ全ての物質を通さない便利な否認道具である。


 ヒュ~ン ベチン ベチベチン


 ウンダス文明星宇宙軍のアンザン型戦艦から放たれたヘジル砲の大半はフロムス・アクト・スキンによって防がれ、フグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍は無傷とまではいかなくとも致命的な損傷を避ける事に成功した。


「次はこちらの番だ! 双丘型戦艦、ヌーブラヤッ砲準備!!」

「了解! ヌーブラヤッ砲準備!!」


 ウンダス文明星宇宙軍からの攻撃を防いだフグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍は反撃に移る為に双丘型戦艦を前に出し、特徴的でもある艦首の大きな半円型の装甲覆うカバーを上部へと展開する。中の丸みを帯びた先端にはヌーブラヤッ砲をという連装砲が付けられていて、オペレーターの操作と共に左右合わせて複数付けられているニュー線回路を起動し始める。


「ニュー線回路へのエネルギー充電率80%! 間もなくヌーブラヤッ砲準備完了です!!」

「良し! 敵艦が次の砲撃を打つ前に出すぞ! 照準敵艦隊の中心!!」


 ウンダス文明星宇宙軍は主砲が防がれた時点でフグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍からの反撃に備えて回避行動を行っており、フグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍の従来の戦艦であるフグリ型戦艦のイン・モー砲の直線的な砲撃を見越して艦隊を散開させている。

 しかし、今回のフグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍が戦線に投乳した双丘型戦艦は最新艦であり、その主砲であるヌーブラヤッ砲は複数のニュー線回路からまるでシャワーの如く広い範囲への白色光線の攻撃を行う物だ。従来のフグリ型戦艦の貫通力のあるイン・モー砲とは真逆の性能を誇っていて、現在のウンダス文明星宇宙軍の様に艦隊の散開させる事は逆にヌーブラヤッ砲の恰好の餌食となってしまう。

 これこそがフグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍による対ウンダス文明星宇宙軍用の切り札であり、先刻のフロムス・アクト・スキンの後ろに双丘型戦艦を下げさせたのもウンダス文明星宇宙軍に双丘型戦艦の真意を隠すためだ。

 フグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍の艦隊司令は先端の突起物をウンダス文明星宇宙軍の艦隊へと向けた双丘型戦艦を見つめながら、主砲発射のタイミングを計る。


「照準、敵艦隊の中心を捉えました! 8割の敵艦を巻き込めます!!」

「いいぞ! 充電が100%に届き次第発射せよ!!」

「了解!! エネルギー充電率93、94,95…」


 横に広がって列をなす双丘型戦艦は、それぞれのぷるんとした半円型の艦首をウンダス文明星宇宙軍へと向け、今か今かと船首をむにむにさせる。

 ウンダス文明宇宙軍は攻撃的な戦法を主として扱っていて、先程フグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍が使用したフロムス・アクト・スキンの様な防御兵装は持ち合わせていない。このヌーブラヤッ砲が放たれれば攻撃一辺倒なウンダス文明星宇宙軍は壊滅し、惑星ゲリーを中心とした商業航路はフグリス・ヌーブラテス文明星が有利な条件で使用する事が可能になるだろう。

 フグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍艦隊司令だけでなく、フグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍の兵士の全員がそう思っていた。

 そして、オペレーターによるエネルギーの充電率のカウントがMAXへと至る。


「99、100%! 主砲、撃ちます!!」

「許可する、ヌーブラヤッ砲! 撃てぇ!!」

「ヌーブラヤッ砲、発射!!」


ビュー ビュビュルビュビュルビュー


 オペレーターの掛け声と共に編隊を組んだ双丘型戦艦の全ての先端の突起から放たれる白色光線。まるで塞き止められていた白い川が濁流となったかの如くウンダス文明宇宙軍へと襲い掛かる。


「くっ、なんだあれは! 回避、回避ぃ!!」

「ダメです! 範囲が広すぎます!!」


 イン・モー砲が来ることを予想していたウンダス文明星宇宙軍の艦隊司令は、初めて見るフグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍の新兵器を前に具体的な指示を出せずに慌てるだけだった。

 無理も無い。このシャワーの如き白色光線の攻撃はどちらかと言えばウンダス文明星の技術であり、先程自分達が放ったヘジル砲と原理は同じ物なのだ。自星の技術が他星に漏れているだけでなく、実用化までされているというのは一大事である。情報が洩れる事は戦争ではある程度当たり前の事だが、いつからとどこまで情報が抜かれているのか分からないのでは溜まった物ではない。

 ウンダス文明星宇宙軍の艦隊司令はそんな事を考えながら自艦隊に迫り来る無数の白色光線の群れを見つめる。そして、今はそんな事よりも自軍が壊滅するだろう事と、自身が死した後に残ったウン宙戦艦にどのような指示を出すべきかを悩み、咄嗟に手元のコンソールで全軍に敗走の指示を出そうとする。


 フグリス・ヌーブラテス文明星雲宇宙軍はこの攻撃で自軍の勝利を確信し、ウンダス文明星はこの攻撃で自軍の敗北を確信した。

 しかし、無数の白色光線がウンダス文明星ウン宙艦隊に届く瞬間、それは起きた。


設置式展開型・輝く蒼き渦ブルーレット・オクダケー!!』


シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ パシュウ


「なんだ!!?」

「なにっ!!?」


 突如ウンダス文明星ウン宙艦隊の前に青色の渦が現れ、ヌーブラヤッ砲の白色光線を塞き止めたのだ。

 これには両文明の艦隊司令だけでなく戦場全ての兵士が驚いており、わずかの間戦場に沈黙が訪れる。


 そして、その静寂を切り裂くように、全宙域へ向けて広域の音声通信が響き渡る。


『我々は便器と性技の守護者のディッキー騎士のクサイ=ソケ・イブと弟子のタマキン=ゴールドウォーカー。この無意味な争いは止めるべきだと進言する!!』

『そうだ! 両文明が争う必要は無いんだ! 真の敵は他に居る!!』


 突如聞こえる停戦の呼びかけに戸惑う両文明の艦隊司令。

 単なる野次馬の戯言だと一臭するのは簡単だが、便器と性技の守護者のディッキー騎士を名乗っている事とヌーブラヤッ砲の白色光線を防いだ事から放置するには難しい問題だとそれぞれが思ったのだ。

 そして、その硬直を好機とばかりに、戦闘区域だというのに両文明の中心に位置する様に惑星ゲリーから一隻のシャトルが打ち上げられる。そのシャトルはゲリーの王国の意匠が施された物であり、中には王国のシャトルで運ばれるに相応しい人物が乗っていた。


『私はゲリーの女王、クイーン・ヘジルハヘ。ウンダス文明星とフグリス・ヌーブラテス文明星雲の両文明とも、争いを止めるのです』


 ディッキー騎士の登場だけでなく女王までもが登場し、混乱する両文明の軍人達。

 それぞれの軍人達は惑星ゲリーの所属では無いが、他文明の女王に向けて銃を放つ事は星間問題になるだろうから迂闊に動く事が出来ない。

 しかし、だからと言ってここで後ろを向いて自分達の星へ引き返す事は命令違反に繋がるので選べない。だからこその静寂。


『私は通商連合に捕まって居たところをディッキー騎士に助けられました。クソエボリューション共和国最高議長の判断は間違っておりません。彼は秘密裏に私を助ける為に動いていたのです。敵は共和国をバラバラにしようと企む通商連合。そして、その背後で全てを操ろうと企む、悪のプッシー卿なのです』


 静寂したウン宙に、クイーン・ヘジルヘハの声が響く。

 プッシー卿。それは千年前に実在したと言われる銀河全てを破滅の道に導こうとした人物だと言われていて、プッシー卿に対抗するための組織として生まれたのがデッキー騎士なのだ。

 突如現れたディッキー騎士、それに追従する女王、そして通商連合とプッシー卿の存在。聞いている限りでは断片的な情報でしか無いが、それでも惑星ゲリーの女王からの言葉を無視する事は出来ない。

 両艦隊司令は同じ考えに行きつき、それぞれから停戦の申し入れを行う為の指示を出そうとする。


ドォン!! ボォバァァン!!!


 その時、両文明の軍艦の幾つかが爆発、チン没した。


「何が起きた!!?」

「側面より攻撃です!! 映像、モニターに移します!!!」

「なんだあれは…」


 停戦をする空気になっていて油断した所に攻撃を喰らい、慌てて攻撃が来た方向へ回頭すると同時に散開しだす両文明の艦隊達。

 不意を突いた攻撃は両文明だけでなくクイーン・ヘジルハヘのシャトルにも飛んできていたが、それは間一陰毛かんいっぱつの所でディッキー騎士によって防がれた様だ。


『あ、あれは…』


デーンデーンデーンデーンデデーンデーンデデーン


 クイーン・ヘジルハヘが視線を向けた先にあるのは、謎の音楽を流しつつゆっくりと惑星ゲリーへと目掛けてやってくる白い巨大な物体。


『間違いない。プッシー卿があそこにいる』

『ええ、完成していたんですね。通商連合が設けた利益を全てつぎ込んで作った巨大宇宙要塞兼超広域制圧兵器のデス・トイレ・ヨーシキー』


 二人のデッキー騎士もシャトルの中から白い物体を見つめる。シャトル打ち上げの寸前で戦ったダース・モレールが言っていた「すでに手遅れだ」という言葉はこの事だったのかと思いながら。





 宇宙の存続をかけた汚い宇宙戦争ダーティ・ウォーズは未だ終わらない。

 宇宙に平和が訪れる、その日まで――

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