第111話 決着

きん術式じゅつしき、解放! 壱銘いめい斬葬ざんそうらい!」


 雷鳴らいめいとどろかせながら、おにの胴体へと五奇いつきは技を放つ。そこへ畳みかけるように、琴依ことえ灰児はいじも技を放つ。


かげ術式じゅつしき参銘さんめい影人形かげにんぎょう!」


術式じゅつしき! 弐銘にめい! 紅蓮剛弾ぐれんこうだん!」


 五奇いつきが少しつけた傷に二人の技も当たる。そこへ更に、等依とういおに達の技と鬼神おにがみひつぎの技も同時に当たる。だが……。


「ぜんっぜんきいてねぇーし! どうなってんだよ!」


 鬼神おにがみの叫びの通り、全く効いていない。輝也てるや黒曜こくようはみんなの援護で精一杯だ。……ただ二人を除いては。


「スサノオノミコト。やってくれ!」


呪詛じゅそを……貴方あなたに」


 ルッツと和沙かずさだ。ルッツは金龍きんりゅう銀虎ぎんこを器用にも交互に乗り移りながらスサノオノミコトに指示を出し、和沙かずさじんいて呪文を詠唱していた。

 そこへ美珠みしゅ雅姫まさきも合流し、全員で再度たたみかける。


参銘さんめい閃牙せんがぜん!」


 五奇いつきが出せる最大出力の光のたまを放つ。それに合わせるように灰児はいじ雅姫mさきが技を同時に乗せる。そして……等依とういが更に上乗せする。


「行くっスよ、氷火ひょうか!」


 そこへ追い打ちとばかりに、鬼神おにがみひつぎ奥義おうぎを放った。


「くらいやがれ! 阿修羅逆鱗斬あしゅらげきりんざん!」


「行って! 阿修羅光輪斬あしゅらこうりんざん!」


 二人の技も合わさって巨大なたまとなり超巨大鬼ちょうきょだいおににぶつかった。その衝撃で吹き飛ばされそうになるのをえていると、和沙かずさの呪詛による動き封じが発動した。


「スサノオ! アマノムラクモノツルギ!」


 武神ぶしんの巨大なつるぎおにの脳天をうち抜いた。その巨体が倒れたのを見て、五奇いつきがトドメの一撃を放つ。


壱銘いめい斬葬ざんそうけい!」


 五奇いつきが放った閃光により、超巨大鬼ちょうきょだいおにきりとなって消えた。その光景を見ていた妖魔王ようまおうはたいそうつまらなさそうに欠伸あくびをすると、静かに告げる。


〔つまらん見世物みせものだった。寝る〕


 それだけ言って彼は次元の狭間へと消えて行こうとする。それを五奇いつきが制止した。


「待ってくれ! お前は……なぜ何もしないんだ!?」


 その問いに、彼は静かに五奇いつきほうへ視線をやり短く答えた。


〔元から何もなしていないからだ〕


 それだけ答えると彼は亜空間のどこかへと今度こそ消えて行った。残ったのはボロボロになった神社と拘束されたすずめ、そして疲弊ひへいしきったトクタイのメンバー達だけだった。

 救護班が来たのは、それからしばらく経った後のこと。みんなもれなく病院送りとなった。そして……両我りょうがの死も伝えられた。


 ****


 その頃。

 スカーレットと対峙していた李殺道りつーうぇいは、彼女の首にバタフライソードを突きつけていた。


「終わりだ」


 静かに目をつぶる彼女の首を、彼ははねようとした時だった。


龍苑ろんえん……。愛していた、わ」


 その言葉に、彼は思わず目を見開いた。そして答える。


「俺もだよ、麗花れいふぁ姉さん」


 最後に一言呟いて、彼女の首をはねた。その目に感情はなく、黙々もくもくと彼女だったモノを抱えると彼は静かに呟いた。


「終わらせる。全ての妖魔ようまを……」


 そう決意を新たに青年は亜空間から、ようやく取り戻したものを抱えて脱出した。

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