第106話 三度目は

輪音りんねの鈴が……鳴っています! 数は二体! これは……この反応は……!」


 五奇いつきの言葉に輝也てるや琴依ことえが頷き、それぞれ戦闘体勢に入る。輝也てるやは呪文を唱えてもう一体の神の再現体ホスセリを出し、琴依ことえ剛徹武流丸ごうてつぶりゅうまるを呼び出した。


「しっかーし! 五奇いつきちゃんの輪音りんねちゃんは本当に便利だねー! たっすかる~!」


 琴依ことえなりのエールととらえた五奇いつきは、小さく微笑むと参弥さんび輪音りんねを構えて先陣を切る。目の前のふすまを思い切り開けた。


「あ、やっほ~♪来たね~待ってたよ~♪」


 そこには、呑気にお茶をするすずめとスカーレットがいた。くつろいだ様子のすずめの姿にもなにも感じることなく五奇いつきが告げる。


「遊びは終わりだ。聞かせてもらうぞ! お前達の目的を!」


 五奇いつきが声を張り上げれば、すずめが不思議そうな顔をする。


「ありゃ~? なんでそんな顔ができるの~? お父さんのかたきだよ? ねぇ?」


 挑発するようなすずめの言葉にも、五奇いつきは平然と答える。


「だからこそだ。お前をゆるさないし裁きを受けてもらう! 覚悟しろ!」


 五奇いつき参弥さんびを構え、すずめにターゲットを絞る。それを見て、彼は不敵な笑みを浮かべた。


「それじゃあ、また壊してあ・げ・る・よ~♪ あと、邪魔なのいらないから。スカーレット」


「承知シマシタ」


 相変わらず無機質に答えると、スカーレットも戦闘体勢に入る。


「ほえ~! この子がウチの等依とういちゃんが苦戦した相手か~! よっしゃ! おねーさまがかたきとっちゃる! 武流丸ぶりゅうまる! いっちゃえー!」


 琴依ことえの号令で、武流丸ぶりゅうまるがスカーレットに向かって行く。それと同時に輝也てるやがホスセリを操る。


五十土いかづち。任せていいんだな……?」


「うん。頼むよ」


 短い会話だが、意図は伝わったらしい。輝也てるやは小さく頷くと、スカーレットに向かって行った。


「おやおや? いいのかな♪一人でボクと戦うなんてさ?」


 またしても挑発してくるすずめに対し、五奇いつきは静かに答えた。


「一人じゃないさ」


「は?」


「俺はお前にはないものをいっぱい持っている! だから! 終わらせる! ここで!」


 五奇いつきはそう告げると、参弥さんびをセットした。


「いけ!」


 すずめに向かって一直線に伸びて行くワイヤーブレードは、あんじょうかわされた。だが、五奇いつきは冷静に次の行動に移る。


きん術式じゅつしき壱銘いめい斬葬ざんそう!」


 技を放ったと同時に駆け出し、すずめのふところを狙って蹴りを入れようとする。それすらも軽やかにすずめはかわすと、胸元から振り子を取り出した。


「はぁ……だからさぁ。精神なんて脆いもんなの! 簡単に壊れるおもちゃなんだよ? それなのにさぁ……」


 一端言葉を区切ってから、すずめは邪気しかない笑みを浮かべる。


「気合入っちゃっててかわいいねぇ♪ ぶっ壊してや・る・よ!」

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