第103話 読めたぞ

黒き羽根の円舞くろきはねのえんぶ!」


 黒曜こくようとなった空飛あきひが攻撃を放つ。その技は三つの尻尾に当たりこそしたが、すぐに再生されてしまった。


「くっ! まずいわね! ワタシの将鬼しょうきは大規模技しか……!」


 ひつぎの声に答えるかわりに、雅姫まさき人造妖魔じんぞうようま合成獣キメラふところに入り込む。


術式じゅつしき弐銘にめい紅蓮剛弾ぐれんこうだん


 炎をまとったやいばから火球かきゅうを放つ。だが、効かない。


「無駄よ無駄よ! あらゆる耐性をつけておるからのう! ふはははは!!」


 高笑いする售月しゅうげつに向かって、黒曜こくようが黒いつたを無数に出して狙うが、どうしても合成獣キメラに邪魔されてしまう。


「……なるほどな。読めたぞ」


 しばらく攻防を繰り広げている間に、黒曜こくようがボソリと呟いた。


「ちょっとどういうことかしら?」


 ひつぎけば、黒曜こくようが答えた。


「おそらく、このけもの售月しゅうげつは精神で繋げられておる。片方を倒そうとしても無意味。ならば、方法は一つよ」


 黒曜こくようが何を言いたいのか察したひつぎ雅姫まさきは、一旦退いったんひく。


「およ? もうしまいかのう。つまらん」


 余裕な售月しゅうげつに対し、黒曜こくようが告げる。


「つまらんのは貴様よ。みるに、使役しえきする才覚はあってもなのであろう? なればこそ、獣頼けものたよりの弱いモノよのう」


 黒曜こくようの挑発に、售月しゅうげつ屈辱くつじょくとばかりに怒りをあらわにする。


「たかが転生体てんせいたいに! 言われとうないわ! 殺せ! 殺せぇ!」


 そう叫び、黒曜こくよう合成獣キメラきがが集中した時を狙い雅姫まさき術式じゅつしきを放つ。


弐銘にめい紅蓮剛弾ぐれんこうだん


 三つの尻尾が切れたと同時に黒曜こくようが自身の羽根で雅姫まさきを抱えながら宙を舞う。そこへ無偶羅将鬼むぐうらしょうきが前に出る。


奥義おうぎ阿修羅光輪斬あしゅらこうりんざん!」


 光のが現れ、合成獣キメラ售月しゅうげつを囲む。


「ふん。その程度予測していなかったとで、も……!?」


 気づけば、頭上には黒曜こくようが放ったつた雅姫まさきの火がこれでもかと燃え盛り、逃げ場を無くしていた。その事に售月しゅうげつが気づいた時には、光のに包まれ、床ごと亜空間へと飲まれていた。


「なっんだと!? これは! この術式じゅつしき藤波ふじなみのモノ! この售月しゅうげつには! あ、あ、あ、あ! 飲まれてしまう! 飲まれ……!」


 最後まで聞こえる事なく、售月しゅうげつ合成獣キメラは亜空間に飲まれた。それを確認すると、黒曜こくようがたくさんの羽根を出して穴を塞いだ上で、手当たり次第の物で亜空間を封じた。

 封印のじゅつを使ったのは雅姫まさきだった。本人曰く、「こっちの方が得意」らしい。


 ひと通りの戦いを終えた三人は、息を整えると少し休憩を取り、この部屋を調べることにした。


「なにか……手がかりでもなんでもいいわ。なにか……なにか……」


 ボソボソ呟きながら調べるひつぎとは反対側を調べていた黒曜こくようから戻った空飛あきひが、あるものを見つけた。


「これは……日記?」


 三人は集まると、中身を確認し絶句した。そこには、虎雷雅こらいが達、孤児と妖魔ようまとの融合実験のことが書かれて……いたからだ。

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