第96話 潜在解放について

 麗奈れいなからきん術式じゅつしきの本質を聞いた五奇いつきは、困惑の色を濃くした。


「武器の潜在解放って……。どうやるんですか?」


 けば、麗奈れいな鉄扇てっせんを見せつけるように開く。


「見る方がお早いですわね。御覧なさい! きん術式じゅつしき!」


 麗奈れいな鉄扇てっせんが分離し、彼女の周囲に浮遊ふゆうする。


壱銘いめい斬葬ざんそうらん!」


 四方八方しほうはっぽうに飛びながら、演習場えんしゅうじょうにおいてある人形に向かって次々と刺さって行く。それを見て、五奇いつきは思わず息を飲んだ。


「これが……解放……!」


「うふふ。そうですわ! もっとも、これはわたくしのこの鉄扇てっせん白金猫しろがねびょうにおいての解放の仕方です。貴方あなたのその独特な武器であれば、また違った潜在解放になるはずでしてよ?」


 麗奈れいなの言葉で、五奇いつきは自身の武器である参弥さんび輪音りんねを見つめる。この二つはルッツからプレゼントされたものだ。


(そういえば、なんで銃と剣が合体している武器なんだろう?)


 疑問に思っていると、麗奈れいなが口を開く。


「ご自身の武器がどうかしまして? まぁ特徴的ですが、バランスは良いのがおのれ蒼主院そうじゅいんのセンスってところですわね……」


「バランス……ですか?」


 五奇いつきが再度、けば、麗奈れいなが続ける。


「あら? 退魔術式たいまじゅつしき陰陽術おんみょうじゅつを独自解釈したものだというのはご存じでしょう? 陰陽おんみょうとはいんよう。つまりは二つの属性のバランス、いえ、二対についのバランスを保っているとも解釈できるのですわ」


「なる……ほど?」


「わたくしの見立てにはなりますが、銃と剣、短剣と長剣。この相反するものを組み合わせることで二対のバランスを、より効率的にしているものと思われますわ」


 麗奈れいなの説明に、五奇いつきは今まで疑問に思っていたことの一つが解決した気がした。


「なんでこんな扱いづらい武器なんだろうって思ってたけど……ちゃんと意味、あったんだな……」


 思わず呟けば、麗奈れいながにこやかに五奇いつきを見つめてくる。


「えっ? なに?」


「いえ、素直な殿方とのがたきらいじゃありませんわよ? 年も近そうですし……わたくしのことを麗奈れいなさんと呼ぶことを許可します」


 突然のことに五奇いつきが言葉を返せずにいると、麗奈れいなが不満そうな顔をする。


五奇いつきさん? よろしくて?」


「えっあ、はい! て……麗奈れいなさ、ん!」


 困惑しながらもそう返せば麗奈れいなは満足げな顔をする。


「では、五奇いつきさん。貴方あなたの武器の潜在解放、やり切りましょう?」


 そう声をかけられて、五奇いつきは思わず気合が入る。


「は、はい! よろしくお願いします!」


 素直に伝えると、麗奈れいなが更に嬉しそうな顔をする。


「ふふふ。やはり、素直な殿方とのがたは素敵でしてよ? 気に入りました。どこまでもお付き合いいたしましょう!」


「あ、いや。どこまでもは……大丈夫です」

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