第94話 模擬戦闘その一

「それじゃあー五奇いつきちゃんと麗奈れいなちゃん、空飛あきひちゃんと美珠みしゅちゃん、鬼神おにがみちゃんと雅姫まさきちゃんでワタシちゃんと等依とういちゃんってゆー感じでどーよ? ワタシちゃん的にはさいっこ~の組み合わせきたー! って感じなんだけどにゃ~?」


 演習場えんしゅうじょうに着くなり、そう提案する琴依ことえに誰も反論しなかった。いつもなら真っ先に反論しそうな鬼神おにがみは静かで、麗奈れいなも納得したらしく深くうなずいていた。


(この感じだと、Cチームもとい緋雲あけくものリーダーは琴依ことえさんなのかな?)


 五奇いつきがそう思っていると、等依とういと目が合った。彼は気まずそうに視線をずらすので五奇いつきは思わず目をまたたかせる。


(こんな等依とうい先輩、はじめて見たな……。お姉さんの前だから? それとも……)


「さぁーて、それぞれでやっりますかにゃー?」


 琴依ことえの声で、それぞれがペアになる。結局、彼女達におし切られてともに訓練を行うことになったのだ。教官達にはすでに緋雲あけくも達が話をつけていたらしく、齋藤からも許可がすぐにでて、今にいたるのだった。


 ****


等依とうい先輩、心配だなぁ)


 五奇いつきが遠くにいる彼らを見ていると、麗奈れいなが頬を膨らませながら、五奇いつきに向かって大声おおごえを張り上げた。


「ちょっと!? わたくしを無視しないでくださる!? レディを前にして……無礼ぶれいでしてよ!?」


「あっ……ご、ごめんなさい! 無視とかじゃないんだけど……」


 五奇いつきが謝れば麗奈れいなは鼻をふんと鳴らしながら、少し距離を取り武器を構える。


「さて。五奇いつきさんでしたわね? 貴方あなたきん術式じゅつしきを扱うとお聞きしましたが、その本質は存じていて?」


 鉄扇てっせんを口元にあてながら尋ねる彼女に、五奇いつきは困惑する。


「……本質?」


 五奇いつきの態度で何かを察したらしい。彼女は盛大にため息をくと、ひたいに手を当てた。


「はぁ……これだから蒼主院そうじゅいんは! しっかりと説明をなさい! いいですこと!? わたくし達が使うきんとは、ズバリ鉱物こうぶつを表しているのです! それがどういうことかおわかりでして!?」


「えっ……いや? 使う武器に依存するから、金属加工された武器を使った方がいいとは聞いて……ましたが……」


 五奇いつきが答えると、麗奈れいなが更に呆れた声を出す。そしてはっきりと告げた。


「いいですこと? 武器に依存するということは……その?」


 ****


 その頃。

 空飛あきひ美珠みしゅは、互いに視線を合わせながら武器を各々おのおの構えていた。


「では、模擬戦闘と参りましょうでございます! 何卒よろしくお願いたします! はい!」


「わっちこそよろしくでありんす。では、いざ!」


 空飛は翅剋しかつ羽刻はこくを、美珠みしゅ数珠じゅずを構え、動き出した。

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