第四章 追求編

第87話 繋がり

「では議題は三つかな? 一つ、虎雷雅こらいが君達……いやあえてこう言おう。媒体者ばいたいしゃ達について。二つ、藤波ふじなみ家と妖魔ようまとの関係。三つ、李殺道りつーうぇいとの関係。ほかにある者はいるかい?」


 この場を仕切るのはルッツだ。彼はテキパキとどこから持ち込んだのかホワイトボードに書き込んでいく。そこで手を上げたのは麗奈れいなだった。


「おありでしてよ、蒼主院そうじゅいんかた? わたくしの家系についても共有しておいた方がよろしいかと。あ、先に言っておきますわ。わたくしにはじもなにもなくてよ! 堂々と天大路てんおおじを名乗りますわ!」


「……そうかい。じゃあまずは……君の家について語らせてもらうことにしようか。そうだね……単刀直入に言うと、麗奈れいな君の一族は……現在の妖魔王ようまおう、"始まりは嘆きからファーストロア”のと言われているんだ」


 ルッツの言葉に、何人かが声を上げる。まさかここで妖魔王ようまおうが出てくるとは思わなかったからだ。その反応を気にすることなく、ルッツは続ける。


「現在の妖魔王ようまおう藤波ふじなみ一族については……今は繋がりがわからないから、末裔まつえいがいることだけ覚えてくれればいいよ。もちろん、心強い味方として。まぁ妖魔王ようまおう藤波ふじなみ一族はなにかしら関わりはあるだろうけどね? あ、ちなみにだけど……五奇いつき君にとってのかたきの名前がわかったよ。にのまえすずめというらしい。彼と妖魔王ようまおうとの関係も、調べる必要がありそうだ」


「なっ!?」


 唐突にかたきの名前がわかり、困惑する五奇いつきにルッツが優しい視線を向ける。


「まぁここら辺はおいおい……ね? さて、議題に入ろうか?」


 ルッツはさっさと話題を切り替えてしまう。置いてけぼりにされた五奇いつきはただ困惑するしかなかった。


「さて、媒体者ばいたいしゃ達というのは藤波ふじなみ一族が集めた孤児達の総称のようだね。そして……実験の被検体だった。ここはまぁ彼らの治療と解析でこちらもおいおいかな? で……重要なのはにのまえすずめとその部下と思わしきスカーレットという妖魔ようまとの繋がりと、李殺道りつーうぇい藤波ふじなみ一族も探していた理由だね」


「そうねぇ。そこについては疑問しかないわねぇ? 藤波ふじなみ一族は元々、蒼主院そうじゅいんついをなす退魔たいま家系かけいだったはずよぉ? それがどうしたら……こんなことをしでかすのかしらぁ?」


 由毬ゆまりの言葉に皆が考えこむ。言われてみればその通りで、疑問しか浮かんでこない。そこへ、Eチームにとっては聞きなれた声がした。


「ふむ。それについてはわしから説明させてもらおうかのう?」


 辰智たつちとともにみぎわが入って来た。元気そうな様子に、五奇いつき達Eチームがほっと息をいた。みぎわは会議室にいる全員を満遍まんべんなく見渡すと、静かな口調で語り始めた。


「まず……わしと藤波ふじなみ家のことを話そうかのう。わしは……人間だった頃があってな? いやもっと簡単に言おうぞ。わしは……人身御供ひとみごくうで捧げられ神として人為的じんいてきまつられた……藤波ふじなみ家の忌子いみごであった」


 そう口にしたみぎわからは、なんの感情も感じられなかった。

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