第86話 集合

 各々おのおのができることをおこなった結果、藤波ふじなみ一族のさとに来て一日が経った。

 ようやく落ち着いて話ができると齋藤が言い、Eチームの面々めんめんは里の空き家の一つを借りて、それぞれ情報共有を行った。


「……そっか。そういう……ことだったんだね……」


 口を開いたのは五奇いつきだ。言葉の節々ふしぶしから、困惑と等依とうい鬼神おにがみへの言い表せない感情がにじみ出ていた。


「……俺様は……」


 言いよど鬼神おにがみに、五奇いつき等依とういも口をつぐんでしまう。だが、その空気を破ったのは空飛あきひだった。


「皆様、色々おありだったようでございますが! まずは、玉髄ぎょくずいからもっと詳しく話をきたく存じますよ、僕は! どうにも……藤波ふじなみ一族だけが絡む問題とは思えないのでございます! はい!」


 憤慨ふんがいする空飛あきひを見て、齋藤が咳払いをする。


「コホン。とにかく、だ。みぎわ様については問題はない。だが、虎雷雅こらいが達については救護班が看ているが意識を取り戻す気配がないそうでな? そこも含めて……Aチーム、Cチームと合流して合同会議を開こうと思っている」


 齋藤の言葉に誰も反論しなかった。ただ、五奇いつきが一言呟いた。


「俺達は……知らなすぎる気がします、教官。だから……知りたいです!」


 それを聞いた齋藤が答える。


「そうだな。その心意気やよし! では、早速会議へおもむくぞ!」


 ****


「やほほー。等依とういちゃん達も来たねー! 後はAチームだけかにゃ~!」


 等依とういの姉、琴依ことえが綺麗に並べられた椅子から手を振り五奇いつき達を出迎えた。どうやら、Cチームが一番乗りだったようだ。


(あれ? そういえば、Cチームの教官と祓神ふつかみ様はどこにいるんだろう?)


 五奇いつきがそう疑問に思っていると、麗奈れいなが座っていた椅子から立ち上がった。


「……そろそろわたくし達の教官と祓神ふつかみ様が到着なされる頃ですわね……。それにしても、Aチームの方々かたがたはどうなされたのかしら? 遅刻でして? 傲慢ごうまんにもほどがあるわ!」


 そう一人怒りながらも、出迎えに行ってしまったらしい。静かになる会議室の中。なお、この部屋は仮設テントを立てたものだ。


 空き家程度なら問題はなさそうと判断したが、大人数が集まれるほどの部屋となるとこのさとだと藤波ふじなみ一族の本邸ほんていしかなく、さすがに危険であるとのことでこうなったのだ。


 しばらくして、由毬ゆまりが先頭となってAチームが入って来た。だが、Aチームの祓神ふつかみ辰智たつちがいない。


「お待ちしておりましたでございますが、そちらの祓神ふつかみ様はどうなされたのでございますか?」


 空飛あきひけば、灰児はいじが答えた。


「うむ! 夜明よあけだったな、君は! それが私達も知らないのだ! だが心配しないでほしい! 後程のちほど、そちらの祓神ふつかみ様とともに来られるらしいぞ!」


 相変わらずハキハキとしている灰児はいじとは対照的なのが、両我りょうがだ。彼はいつものような自信に満ち溢れた感じがなく、下を向いてうつむいていた。


(そういえば……等依とうい先輩達、蒼主院そうじゅいんの人達は……ルッツ先生から聞いたらしいけど。それかな? 等依とうい先輩の様子もずっとおかしいし……)


 ほどなくしてルッツと……黒髪にポニーテールが印象的な女性と、右側が銀色で左側が黒色という特徴的な髪色をした十代くらいの少女、そして麗奈れいなが入って来た。

 黒髪ポニーテールの女性がゆっくりとその場の全員に対して口を開く。


「……自分がCチーム緋雲あけくもの担当教官、流名和沙るなかずさ。隣におられるのが祓神ふつかみ射離薙いりなぎ様。諸君しょくん、よろしく」


 短い挨拶を終えると、いよいよ会議が始まった。

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