第80話 衝撃の事実

 空飛あきひの言葉を受けて口を開いたのは琴依ことえだった。


「そりゃー兄弟に決まってるっしょ? あ、ちな。ワタシちゃんと等依とういちゃんがおんなじおかーさまからで、両我りょうがちゃんと大兄様おおにいさまはそ? いわゆる腹違いってやつ?」


 衝撃の事実に、空飛あきひが大声を上げて驚いた。その声で五奇いつきがピクリと動いたのがわかったのか、ルッツが話を強引に戻す。


「……僕は五奇いつき君の師匠だからね。責任は取るさ……」


 いつになく真剣な声色のルッツに、等依とういは大人しく引き下がることにしたようだった。それを確認すると、ルッツはいまだ眠っている五奇いつきを連れてどこかへと行ってしまった。

 その背を見送ったのと同時に、灰児はいじ輝也てるや緋雲あけくもの残りの三人が合流して来た。

 等依とういの様子を見て声をかけたのは……麗奈れいなだった。


「ちょっと? 何かもめごとでして? というか、蒼主院そうじゅいん殿方達とのがたたち? 随分ずいぶん顔色かおいろがすぐれないこと! こちらまで辛気臭くなってしまいますわ!」


無礼ぶれいな! Cチームのくせに!」


 両我りょうがの言葉に、麗奈れいなが顔を真っ赤にして怒り出した。


「なんですって!? これだから蒼主院そうじゅいんは! 支配的! 高圧的! 憎たらしいったらありませんわ!」


 彼女の言い分に今度は両我りょうがけわしい顔になる。


「お前こそ、何者なにものだ! 蒼主院そうじゅいんを悪く言うことは許さんぞ!」


「あら? わたくしのことをご存じなくて? わたくしは天大路てんおおじ天大路麗奈てんおおじれいなでしてよ!」


 彼女の名前に等依とうい神妙しんみょうな顔をする。横にいた琴依ことえが嬉しそうな声色で口を開いた。


「そーなんよ~! 等依とういちゃんとワタシちゃんのいとこなんだよ~! ビックリっしょ!」


「驚いたけど……マジかー……」


 等依とういが頭をくのを見て、空飛あきひが不思議そうな顔をする。微妙な空気の中で、美珠みしゅが咳払いをした。


「そろそろわっち達の紹介もするべきでは? わっちは倭耶美珠わやみしゅでありんす。そして、隣にいるのが甲斐雅姫かいまさきでありんす」


 微妙なくるわ言葉を使う美珠みしゅに対し、空飛あきひが指摘する。


「その、へ……独特な口調でございますね。はい」


「……それを貴様が言うのか?」


 ずっとやりとりを見守っていた齋藤が口を開いた。空飛あきひは不思議そうに首をかしげる。その様子を見て、齋藤がため息をく。


「まぁいい。五十土五奇いかづちいつき鬼神乙女おにがみおとめは奴らに任せるとして、だ。どうする? このさとを調べてみるか? 何か残っているとは考えにくいがな」


 藤波ふじなみ一族の様子から、李殺道りつーうぇいにもあの妖魔ようま達についても手掛かりが残っているとは考えにくかった。そんな空気の中、口を開いたのは麗奈れいなだった。


「調べるだけ調べてみては? わたくし、知っておりますのよ。……傲慢ごうまんな連中ほど、穴がありましてよ……」


 彼女のその声色にはどこか怒りが含まれていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る