第79話 合流と

「ちぃ! わたしの活躍なしではやはりがすか! なぜわたしを参戦させなかった!?」


 齋藤、由毬ゆまりとともに待機していたらしい両我りょうがが合流した途端、開口一番かいこういちばん怒りを見せれば、気を失っている五奇いつきを抱えたルッツが苦笑いを浮かべながら答えた。


「君は蒼主院そうじゅいん家の次期当主だからね。なにかあったら、その……困るだろう?」


 言いにくそうに告げるルッツに、両我りょうがの顔色が困ったような表情に変わる。


「それは、そうですが……。いえ、貴方あなた様がそうおっしゃるなら納得します!」


 ルッツの言うことを素直に両我りょうがを見つめながら、等依とうい黒曜こくようの変身を解いた空飛あきひに声をかける。


「……空飛あきひちゃん、記憶とかもろもろどーなん?」


「なんとか大丈夫でございます。はい! やはり、サーシャの力を取り込んだのが大きいようでございますね!」


 今彼らがいるのは藤波ふじなみ一族のさとの中心にある広場だ。虎雷雅こらいが達を保護した緋雲あけくもの四人と灰児はいじ、そしてみぎわ様を助け出した輝也てるやはトクタイの救護班と話している最中さいちゅうだ。

 そんなやりとりをしていると、鬼神おにがみひつぎが無言で由毬ゆまりに近寄っていく。その表情はすぐれない。二人の様子になにかを察したらしい由毬ゆまりがゆっくりと煙管きせるにくちづけながら尋ねる。


乙女おとめひつぎ。話がしたいのでしょう? ここではアレだし……ちょっと場所をうつしましょうかぁ?」


「わかったわ、由毬姉様ゆまりねえさま乙女おとめも文句ないわね?」


 由毬ゆまりひつぎ。二人からの視線を受けて鬼神おにがみは舌打ちをすると、無言でうなずいた。それを確認すると、由毬ゆまり主導でひつぎ鬼神おにがみは移動して行った。


 その背を見送りながら、ルッツが五奇いつきを抱えたまま齋藤に向かって声をかける。


「……五奇君いつきを借りるよ?」


 その言葉に反応したのは等依とういだ。珍しく怒っているようで、その目つきは鋭くルッツを睨みつける。


「なにをする気なんだ? いや、そもそも……五奇いつきちゃんになにかしていたのか? もし、もしそうなら……!」


 今にも怒りをぶつけそうな等依とういに、空飛あきひがこれまた珍しくあわてる。だが、それを制止したのは両我りょうがだった。


「落ち着くのだ等依とういよ! このおかたを……大兄様おおにいさまを信用していないのか!?」


「そうだと言ったら? お前が次期当主になったのだって……元を辿たどればこの男がやらかしたからだろう!」


 いつもの等依とういでないのは明らかだが、それを止められる者はいない……と思われたその時だった。


「まーまー等依とういちゃん? 熱くならない、ならない~! ワタシちゃんとそっくりな美人顔びじんがおが台無しだよ?」


 張り詰めた空気の中で、ゆったりとした声が響く。振り返れば救護班に虎雷雅こらいが達を引き渡し終えたのだろう、緋雲あけくもの四人のうちの一人、琴依ことえがいた。彼女を見て、等依とういの表情が今度は困ったような顔に変わる。


琴依ことえ……。だけど……」


 納得いかなそうに口ごもる等依とういの様子を見て、いよいよ耐え切れなくなった空飛あきひ大声おおごえを上げる。


「あの! 皆様は一体どんな関係なのでございましょうか!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る