第75話 関係

我々われわれの悲願を、ここに! 弥隼みはや阿龍ありゅう凰駿おうしゅん! これ以上の犠牲を出さないためにも、ここで殺すぞ!」


 虎雷雅こらいがの声にこたえるように、彼らが呼び出した妖魔ようま達が融合して行く。その姿は巨人そのもので、鬼神おにがみは思わず圧倒された。


「な、なんだよ! てめぇらマジでよぉ! 俺様となんの関係があるんだ!?」


 彼女の声に対し、先程から黙っていた黒曜こくようが口を開く。


「なるほど、な」


「あぁ!? なんだ急によ?」


 鬼神おにがみが尋ねれば、黒曜こくようは深く息をいて頭を小さく左右に振り、呆れたような声を出した。


まったく。人のごうが深いとはく言ったものよのう。はぁ……」


「あ!?」


 鬼神おにがみの不機嫌そうな声色にもおくすることなく、黒曜こくようが今にも襲って来ようとしている複合体の妖魔ようまを操る虎雷雅こらいが達に向かって声を発した。


「聞くがいい! 貴様らは、宿? さしずめ、強大かつ操りやすい妖魔ようまを扱えることと引き換えに、人間としてのうつわ喪失そうしつしていくと見た! 違うか?」


 黒曜こくようの言葉に虎雷雅こらいがが反応を返す。その声は震えていた。


「そうだと言ったら、どうする? 助けてくれるのか? この、人間ではなくなる恐怖から! 鬼憑おにつくみするお前達が!」


 虎雷雅こらいがの怒りを込めた咆哮ほうこうを合図に、巨人と化した融合妖魔ゆうごうようま黒曜こくよう鬼神おにがみに襲いかかる。右手を振りかざし、二人をし潰そうとする。その時だった。


「やらせないわ。……奥義おうぎ阿修羅光輪斬あしゅらこうりんざん


 鬼神おにがみ黒曜こくようの横をすり抜けて無偶羅将鬼むぐうらしょうきが現れ、光の輪が周囲に広がり巨人の右手にれた途端、ぜた。


新手あらてだと!? いや、そうか……お前達は、!」


「やっと表情が変わったな、とら野郎! ああそうだ! 俺様達……Eチームは全員、陽動だ!」


 得意げに口元を歪ませる鬼神おにがみの元に、ひつぎがやってきて呆れたような声を出す。


乙女おとめ? 作戦を早々そうそうとバラすのはよくないわ? まぁ、もうしょうがないけれど」


「んだよ、ひつぎ! 来たのはてめぇらだけじゃねーんだから、いーだろうが!」


 鬼神おにがみの言葉に、ずっと虎雷雅こらいがの言いなりだったはやぶさの目をした女、弥隼みはやが口を開いた。


「来たのは……まさか。蒼主院そうじゅいんの者達、総出そうで!?」


 彼女の声と重なるように、猛々たけだけしい少年の声が響き渡る。


「うむ! Eチームの健闘のおかげだな! では、参ろうか! 私の名は愛原灰児あいはらはいじ! 退魔師たいましである!!」


 妖魔剣ようまけんゼルギウスを手に、灰児はいじが突入してくる。その後ろに続くように現れたのは、四人の女性達だった。


「AチームとEチームにだけ、いい顔はさせませんわ? わたくし達、Cチームもとい"緋雲あけくも"も参上しましてよ?」


 薄い金髪を縦ロールにした二十代くらいの女性が鉄扇てっせんを口元に近づけ怪しく微笑みながら、高らかに笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る