第74話 なんで?

壱銘いめい斬葬ざんそう!」


 五奇いつきが叫び、技を繰り出す。すずめは軽やかなステップでかわすと、バク転して五奇いつきから距離を取った。


「ふふふ♪ その程度か・な? じゃあ次は、♪」


 すずめは手にしている振り子をゆっくりと見せつけるように揺らす。その揺れは徐々じょじょに大きくなっていく。


「いっくよ~♪物理干渉ぶつりかんしょう二の舞にのまい! 一夜の悪夢いちやのあくむ!」


「ぐわ!?」


 五奇いつきの身体がふらつく。地面に膝をつきそうになるのを堪えて、武器を構え直す。


「さすが耐性持ち~♪効きづらいね~♪っていうかさ……君、リアクション普通だね? かたきなのに?」


 すずめの言葉に、五奇いつきは思わず固まる。


「あーそっか。なるほどね? キミ、蒼主院そうじゅいんに。あははは♪相変わらずやることがえげつないな~♪」


「封印……? なに、を、言って……!」


 戸惑う五奇いつきに対し、すずめが更なる言葉を投げかける。


「そのまんまの意味だ・け・ど♪いやー昔からあそこは異常なんだよ、い・じょ・う♪だからさぁ……」


 一端言葉を区切ると、すずめは目を細めて邪気しかない笑みを浮かべる。


「解放してあげるよ♪……君の、憎しみをさぁ!」


 ****


 一方。

 スカーレットと対峙している等依とういは、身体の不調に気づいていた。


(間違いなく、敵の攻撃っスね~? 気力が……奪われている?)


 推測すいそくを立てながら、等依とうい火雀応鬼かがらのおうき氷鶫轟鬼ひとうのごうきに指示を出す。火雀かがら前衛ぜんえいでスカーレットに向かって行く。次々と繰り出されるこぶしを、スカーレットは軽やかにかわす。


「デハ、反撃ヲ開始シマス」


 スカーレットが両手を合わせ、攻撃体勢に入った。それを察知さっちした等依とうい氷鶫ひとうを前に出したのと同時に、スカーレットの両手が光り出し、そのまま収束して光線を放った。


「マジか!? この状況でビームとかありっスか!?」


 あわてて氷鶫ひとう氷円鏡ひょうえんきょうを発動させて、光線を防ぐ。そのすきをぬって、スカーレットが等依とういに接近する。


(コイツ……戦い慣れしまくってるスね……。だけど、!)


 殺意も敵意もないスカーレットの攻撃を、等依とうい簡易式神かんいしきがみ駆使くししつつ避けながら距離を取る。


「わりーけど、近寄られたら困るんスよね……!」


 等依とういが次の手を繰り出そうとした時だった。五奇いつきの言葉にならない叫び声が……木霊こだました。


五奇いつきちゃん!?」


 驚いて等依とういが声をかければ、そこにはにすずめへの憎悪ぞうおで理性を失った五奇いつきの姿があった。がむしゃらに技を放ち、すずめに向かって行く。


「あははは!! それだよ、そ・れ♪ やっぱさー親のかたき相手にはこうでないと、ね♪」


 たのしげなすずめの笑い声が周囲を包む。どこまでも邪気しかない声が五奇いつきしゃくさわった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る