第69話 想いと思い

藤波ふじなみ家だぁ? んなもん聞いたことねーぞ?」


 鬼神おにがみいぶかしげにそう言えば、等依とういが顔をせながら続ける。


「……あんま詳しいわけじゃないっスけど、かなりやばいってのは聞いたことがあるっス。ただ……鬼神おにがみちゃんの"鬼憑おにつき"と、アイツらの妖魔ようまがどう繋がってんのかまではわかんねースけど」


「では……みぎわ様は、その藤波ふじなみ家にいらっしゃるということでございましょうか?」


 空飛あきひけば、等依とういは「おそらく」と小さく答えた。それを受けて、五奇いつきが口を開く。


「……等依とうい先輩。藤波ふじなみ家の場所、わかりますか?」


「……五奇いつきちゃん、行く気なんしょ? でもめっちゃ危険スよ? 教官にかなくていーんスか?」


 等依とういの言葉に、五奇いつきは力を込めて言い返す。


「だけど! いやなんだ! 助けられるかもしれないのに、そこに手を伸ばさないなんて! 俺は! 俺は!! もう失いたくないんだよ!!」


 五奇いつきの必死さに、鬼神おにがみが頬をかきながら言う。


「ったくしょうがねーな、ウチのリーダー様はよぉ。ま、確かに俺様も引っかかってるしな……」


 彼女の言葉に、空飛あきひも続く。


「そうでございますね。気になることもたくさんありますし……。はい」


 そう言って二人は五奇いつきの近くに寄る。


「二人とも! ありがとう!」


 お礼を言えば、黙っていた等依とういも口を開く。


「しゃーないっス……んじゃま、行くっスかね! 藤波ふじなみ家に!」


等依とうい先輩……。はい、行きましょう! みんなで!」


 四人はうなずき合うと、等依とういの案内で藤波ふじなみ家がある場所を目指し、動き出した。


 ****


「して? 数は四匹で……そのうちの一匹が鬼憑おにつきで、一匹が蒼主院そうじゅいんとな?」


 報告を聞いてどこか嬉しそうな相手の様子に、虎雷雅こらいがは思わずくちびるを噛みしめる。


「……本当、なんだろうな。アイツらを倒したら……」


 絞り出すような彼の声色に、その相手はただたのしげに告げる。


「あぁもちろん。叶えてやるとも? ただし、倒すのではないな。


「……わかった」


 やりとりを終えると、虎雷雅こらいがは退室する。その背を見送りながら、は笑う。


「ふむ。やはりたまらぬな……ゾクゾクしてきたわい」


「悪趣味ー。そんなんだから、モテないんだよ♪」


 突如として現れた声のぬしに向かって言葉をかける。


「おぬしか。何用なにようか?」


「ん~? あのねー? 一つだけ。……あの中の一匹はボクのだ・よ?」


 威嚇いかくするようにそれだけ告げると、は姿を消した。


「……悪趣味なのはどちらであろうな……?」


 やれやれと言いながら、も準備を始めるのだった。

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