第68話 窮地

 みぎわの言葉に、四人は動揺を隠せない。


みぎわ様!? 一体何を!?」


 五奇いつきがそうけば、彼は目をせる。


「おぬしらを安全な場所まで転移させるのじゃ。なに、われは祓神ふつかみ。人ならざる者。何も出来ぬであろうよ……。特にあやつらのおさにはの」


 彼らが何者なのかを知っているような口ぶりに五奇いつきが更に言及しようとしたが、その時には身体からだが宙に浮いていた。


「な、なんだ!?」


 五奇いつきが驚くと同時に等依とういが口を開く。


「これは……、転移術式てんいじゅつしきっスか!? でも、それやるにはかなりの祓力ふつりょくを消費するはずで……」


「はぁ!? んなもん使ったら……どーなるんだよ?」


 鬼神おにがみけば、みぎわが優しく答える。


「われはおそらく、力の大半を失いあやつらに捕られるであろうよ。じゃがあんずるな。死ぬことは……?」


 その言葉に四人が反論しようとしたが、その時にはすでに暗転し、意識が遠のいていた。


 ****


「ううん……?」


 四人が目を覚ますと、そこは小高い丘の上だった。山岳地帯の中ではあろうが、洞窟からはかなり離れてしまったのだと気がついた。


「皆さん、どういたしましょう! みぎわ様が!」


 空飛あきひの言葉で、みぎわがいないことに気づく。


「おい……マジでいねぇじゃねーか! どーすんだよ!?」


 鬼神おにがみの言葉に等依とうい空飛あきひうつむく。だが、五奇いつきだけはまっすぐな目をして言い切った。


「助けに行こう」


 ****


 「お前がトクタイに飼いならされたという……みぎわかえ?」


 暗いろうの中。捕らえれたみぎわに、その人物は尋ねる。


「飼いならされた……はちと違うのう。おぬしこそ、?」


 そう言い返せば彼は腹が立ったのか、みぎわの顔を叩いた。


「ふん。人身御供ひとみごくうのなりそこない風情ふぜいが! ……良かったなぁ? 子孫どもに会えるぞ?」


「……別に会いたくなどなかったがの」


 もう一度汀みぎわの顔を叩くと、その人物はろうから出て行ってしまった。


「……おろかな……」


 一人残された彼はポツリと呟くのだった。


 ****


 みぎわを救出することを決めた五奇いつき達だったが、襲撃してきた彼らのことが何もわからない現状に、どう手を打つべきか頭を悩ませていた。

 なにせ情報が少なすぎるのだ。目的はおそらく李殺道りつーうぇいだろうが、それにしても気になるのはあの妖魔ようま達の呼び出し方だ。


「……あれじゃまるで……」


 五奇いつきが言おうか迷ったタイミングで空飛あきひが口を開く。


「あのかた達、まるで鬼神おにがみさんのような呼び出し方をしておりましたですね……。何者なのでございましょうか?」


「こっちがきてぇわ! クソが!」


 キレる鬼神おにがみに対し、等依とういが珍しく真剣な声色でぼそりと呟いた。


「……藤波ふじなみ家」


 目線を彷徨さまよわせながら、彼は断言した。


「多分、藤波ふじなみ家だ。蒼主院そうじゅいんとかつて肩を並べ、そしてたもとをわかった一族」

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