第67話 似て非なる

 白いとらの威圧する声色に、五奇いつき達は警戒心を上げる。


「……そうか。そういう答えか」


 そう呟くと、白いとらは飛び上がり五奇いつきめがけて蹴りをいれようとしてきた。あわてて回避すると、空飛あきひ百戦獄鬼ひゃくせんごくきが白いとらに向かって行く。


阿龍ありゅう弥隼みはや凰駿おうしゅん!」


 白いとらが何かを呼んだ。そのタイミングで、等依とういが珍しく叫ぶ。


「ちょい! みんな! なんかやばい気配するっス!!」


 だが、むなしくも周囲にはすでに三人の黒いローブに仮面を着けた者達がいた。その中の一人が声を発する。


「本当にやるのね? 虎雷雅こらいが


 声のぬしは女のようだった。その声に白いとら……虎雷雅こらいがは一言「そうだ」と答えると、咆哮ほうこうを上げた。それを合図に、黒いローブの三人と虎雷雅こらいがが、身体からだからオ《・》


「な、なにが起こるのでございましょうか!?」


「うろたえんな空飛あきひ! 全員ぶっ倒せばいいんだからよ!!」


 鬼神おにがみがそう言ったと同時に、虎雷雅こらいがと黒いローブの三人の身体からだから何かが現れた。


「……はっ?」


 思わず間抜けな声が五奇いつきの口から漏れる。等依とうい空飛あきひ鬼神おにがみも驚き、唖然あぜんとしてしまった。

 そこにいたのは二メトールえのりゅうとら鳳凰ほうおうはやぶさの姿をした妖魔ようま

 形こそ違えど、そのさまはまるで"鬼憑おにつき"のようで。


「おぬしらよ、動揺しておる場合じゃないであろう! 逃げねば死んでしまうぞ!」


 みぎわの声で、五奇いつき達は動き出す。まず、等依とうい火雀応鬼かがらのおうき氷鶫轟鬼ひとうのごうきを呼び出し、結界を張る。


封呪文ふうじゅもん改変解放! 土の退魔術式つちのたいまじゅつしき肆銘しめい円盾えんしゅん!」


 五奇いつきが防御技である円盾えんしゅんを繰り出し、更に重ねた。


「なるほど? それで我々の攻撃を防ごうというのか。いいだろう、どこまで耐えられるか、見せてみろ! 蒼主院そうじゅいんの手先どもよ!」


 虎雷雅こらいが達が呼び出した妖魔ようま達が一斉に襲いかかって来る。それを防ぐ等依とうい五奇いつきだが……。


「どーするっスか? オレちゃんの技、これだーとあんま持たないかも……」


 等依とういの言葉に、五奇いつきも続く。


「俺のも、無理して使っているから……耐久は、キツイ!」


 そんな二人の様子に、鬼神おにがみ空飛あきひが顔を見合わせ、うなずき合う。


「では、彼らの攻撃のすきが生まれた瞬間に、僕達が道を切り開きましょう!」


「俺様の百鬼びゃっきの力で、ぶっ飛ばしてやるぜ……!」


 戦闘体勢に入った二人を、みぎわが止めた。


「待つのじゃ。すきなどおそらく出ないであろうよ」


 彼の言葉に鬼神おにがみが食ってかかる。


「はぁ!? じゃあどうしろってんだよ! このままじゃ死んじまうんだろうが!」


「わかっておるとも。ゆえに……われにまかされよ」


 静かに、だが、どこか覚悟を決めた声色で、みぎわはそう言った。

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