第66話 遭遇

「えっ? 空飛あきひ君わかるのか?」


 五奇いつきけば、空飛あきひうなずく。


「はい、ほんのわずかでございますが……。これで、なにかできないでございましょうかね?」


 五奇いつき等依とうい鬼神おにがみに話を振れば、三人は困惑したまらず鬼神おにがみが答える。


「俺様に振るんじゃねーよ」


 すると一緒に来ていたみぎわが口を開く。


「ふむ。これであれば、われが役に立てそうじゃのう」


みぎわ様が!?」


 五奇いつきが驚けば、みぎわが微笑む。


「うぬ。気配を追うことならできるじゃろうて。……ついでに、山岳地帯にも行ってみても良いかもしれんのう。より濃く妖力ようりょく検知けんちできるかもしれぬ」


 ****


 等依とういの運転する車で、李殺道りつーうぇいと二度目に出会った山岳地帯の洞窟前までやってきた四人と一柱ひとはしらは、ゆっくりと中へと入って行く。


「時に。空飛あきひちゃんさー、ホラーゲームでこーいう展開の時って、何が起こるんが定番なん?」


 場所が場所なだけだからか、等依とういがそんなことを空飛あきひく。


「そうでございますね……。オーソドックスなのは……」


「おい、んな話するんじゃねーよ!」


 会話に割って入る鬼神おにがみに、五奇いつきは思わず苦笑くしょうした。


(本当に、苦手なんだな……)


「ふむ。仲が良いことは美しきかな、そのえにし、忘れるでないぞ?」


みぎわ様にそう言われると、不思議な感じですね」


 五奇いつきがそう言うと、みぎわは優しく話を続ける。


「ふふ、辰智たつち様よりは神格は低いがのう。一応神様じゃからな? ……さて、ここかのう?」


 気づけば、現場に辿り着いていた。ここは人が滅多めったに立ち入らないからか、あの時のまま放置されているようだった。

 みぎわが戦闘があったであろう箇所かしょを見てまわる。時々ときどき、地面などに触れては、目を閉じる。それを何度か繰り返すと、彼はゆっくりと、邪魔にならないようにしていた五奇いつき達のそばにやって来た。


「これくらいかのう。李殺道りつーうぇいだったかの? そやつの妖力ようりょくを集めてみたのじゃ。これで辿たどりやすくなったのではないかの?」


 そう告げると、五奇いつき河川敷かせんじきで見つけたやいば欠片かけらを渡してきた。


「えっ? 俺にですか?」


 戸惑いの声を上げれば、みぎわは頷く。


「おぬし、りーだーじゃろう? なれば、先導するが五奇いつき殿のお役目であろうよ」


「そ、そう言われると反論できませんね。わかりました、これは俺が責任を持って預かります」


 そう言って五奇いつきやいば欠片かけらをしまおうとした瞬間だった。鋭い視線と殺気を感じて、四人と一柱ひとはしらは崩落した洞窟の上を見上げる。


「なっ!? し、白いとら!?」


 下半身にジーンズを履き、左前足だけ不自然に布を着けた白いとらが、二足歩行で立ってこちらを見下ろしていた。


妖魔ようまか!? てめぇなんだおら!」


 鬼神おにがみ威嚇いかくしながら百戦獄鬼ひゃくせんごくきを呼び出せば、その白いとらが野太い声で言う。


「それをよこせ。……命が惜しければな」

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