第三章 恐るべき一族編

第65話 痕跡を追え

 Aチームとの合同作戦から三日後。

 五奇いつき達、Eチームに新たな任務が齋藤より言い渡された。


今回課せられた任務は、『李殺道りつーうぇい痕跡こんせきを探せ』だ。異論は認めん」


 その言葉に五奇いつきが思わず声を上げる。


「ちょ、ちょっと待ってください教官! それは……Aチームの任務だったんじゃ……?」


「あぁその事か。Aチームは別任務を与えられ遂行すいこう中だ。他のチームもな? わかったらさっさとかかれ!」


 齋藤の言葉に五奇いつきが困惑をあらわにすると、鬼神おにがみが食ってかかった。


「指示雑過ぎんだろ……。せめて資料とかねぇのかよ!」


「あったら苦労はせん。それに、奴と最初に接触したのは貴様らだ。対峙したのもな? そこから何か得られるものもあるだろうよ」


「……そんなものなのでございましょうか……?」


 思わず呟く空飛あきひに、等依とういが声をかける。


「まぁ、空飛あきひちゃん気絶してたっスからねー」


「うっ! それを言われてしまいますと、はい」


 そんな二人のやりとりを相変わらずいつの間にいたのか、みぎわが微笑みながら見つめていた。


「ってみぎわ様!? いつの間にいらしたのでございますか!?」


 驚く空飛あきひに、みぎわが優しい声色で語りかける。


「なに、今回の任務はわれも現地に行こうと思うてのう」


 その言葉にEチームの全員が驚き、視線が一気にみぎわに集まった。


「みなの者、よろしくじゃぞ?」


 ****


 まず向かったのは、最初に李殺道りつーうぇいと出会った河川敷かせんじきだ。今は夕方だが、人気ひとけがない。


(ここまで静かだと、あの戦いがあった場所とは思えないな……)


 五奇いつきがそう思っていると、鬼神おにがみが近くに寄ってきた。


「おい、五奇いつき。なんか思い出すことかねーのかよ? いっちゃん最初に接触したのはてめぇだろ?」


「そう言われてもなぁ……。俺も咄嗟とっさだったし、記憶がだいぶ曖昧あいまいだよ……」


 五奇いつきが答えれば、彼女は少し考えた後、等依とういほうに視線をやる。


「おい、等依とうい! てめぇの簡易式神かんいしきがみでなんとかなんねーのかよ?」


 声をかけられた等依とういは少し困った顔をする。


「うーん、ワンチャン? まぁでも、おちこぼれなんで……あんま期待しないでほしーっスね」


「いいからやれや」


「はいは~い、そんじゃ式神しきがみちゃん達をっと……」


 折り紙で出来た簡易式神かんいしきがみ達を飛ばせば、周囲を縦横無尽じゅうおうむじんに動き回る。


「あの、これは一体何をしているのでございましょうか?」


 空飛あきひけば、等依とういが答える。


「あの李殺道りつーうぇい? のなんか力ってーの? そーいうのから辿たどれないかなーなんて?」


「なるほどでございます。さすが等依とういさんでございますね!」


 空飛あきひが褒めれば等依とうい苦笑くしょうする。


「……そんなことないっスよ……。って、うん?」


 式神しきがみの数体が、河川敷かせんじきはしに集まっていた。不思議に思いながら、四人はそこに向かって行く。


「ん? これは……やいば欠片かけら?」


 五奇いつきが拾い上げれば、空飛あきひが反応する。


「これ、気がするでございますよ?」

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