第64話 一時の静寂

 人造妖魔じんぞうようま達を各自かくじ倒し終わった混合チームの面々めんめんは、元の地点に戻ってきた。


「おかえり。みんな、い経験ができたかな?」


 相変わらずの穏やかな口調のルッツに対し、灰児はいじが答える。


「とても良い経験がつめましたぞ! この機会を頂き、感謝します!」


「そうかい、それはなによりさ。他のみんなはどうだったかな?」


 そう話を振られれば、五奇いつき空飛あきひは互いに困ったように顔を見合わせ、両我りょうがひつぎは互いから距離を取っていた。

 それを見て鬼神おにがみ等依とういは複雑そうな顔をし、唯一、輝也てるやだけが無表情にルッツを見つめていた。


 そんな彼らを見て、ルッツが優しく声をかける。


「うん、大体わかったよ。じゃあ、みんな、解散と行こうか?」


 こうして、各チームは別々の車に乗り込む。すると、由毬ゆまり鬼神おにがみに声をかけてきた。


乙女おとめ。たまにはお父様やお母様に連絡いれなさいなぁ?」


「うるせーな! わかってるっつの!」


 反抗的ながらも素直に答える鬼神おにがみの姿をみて五奇いつきがぼんやりと思う。


姉妹しまいか……俺は一人っ子だから、そういうの憧れるな……)


 その時だった。両我りょうがが車の窓を開け、大声おおごえで叫ぶ。


「おい! Eチームの者どもよ! 今回の借りは必ず返すからな! このわたしのプライドにけて! 特に、田舎者二人と等依とういはな!!」


「……あっそ。だからなんスか……」


 等依とういは車の窓をあっさりと閉め、まだ何か言っているのであろう両りょうがを無視する。それを見て、五奇いつきは珍しく隣の席に座っていた鬼神おにがみに、遠慮えんりょがちに訊きく。


「あのさ……。等依とうい先輩何かあったの?」


「あ? しらねーけど……色々あるんじゃねーの? てめぇにだって、詮索せんさくされたくねぇことくらいあんだろ?」


 そう言われ、五奇いつきは自分が浅はかだったと理解した。確かに彼女の言う通り、れられたくないものもある。


「……そうだね。ごめん」


「おい、貴様ら。戻ったらレポートを提出してもらうからな? では行くぞ!」


 齋藤の言葉を合図に、車が走りだした。どうやら今回、ルッツはどのチームの車にも乗らなかったらしい。それが少し気になった五奇いつきだったが、くのはやめた。


 ****


「うん、行ったみたいだね?」


 一人残ったルッツは、指を二回鳴らした。直後、金色と銀色の二体の等依とうい両我りょうが使役しえきしているものよりも一回り大きいおにが現れた。


金龍きんりゅう銀虎ぎんこ。念のため、辺りを調べてきておくれ」


 二体のおに達は一礼いちれいすると、消えて行った。


「ふぅ。そろそろ活発になってくるだろうしねぇ……。僕だけでどこまでやれるのやら」


 含みを持たした笑みを浮かべると、ルッツは静かに目を閉じた。

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