第59話 もう一方では

 五奇いつき空飛あきひ四苦八苦しくはっくしていた頃。

 等依とうい鬼神おにがみもまた、困惑していた。


「君達は、両我りょうがひつぎと違って仲が良いのだな! あの二人を見ていたから、てっきり蒼主院そうじゅいん家と鬼神おにがみ家はそういう、なにか因果関係があるのだろうか!?」


 後半、ただの疑問形になっている灰児はいじのペースに、等依とういがもはや諦めたように答える。


「あー……? オレちゃんはそんなにスけど、代々だいだい蒼主院そうじゅいん家と鬼神おにがみ家はとか言うっスねー?」


「そうなのか! 不思議だ! 君は両我りょうが随分ずいぶんと雰囲気が違うが、理由があるのか!?」


「いや……これは、その? べっつにー?」


 等依とういの答えがどんどん適当になっていくので、さすがに輝也てるやが止めに入った。


「……おい。あまり質問しすぎるな……」


「しかし! 気になるものは気になるのだ! 輝也てるやよ、許せ!」


 二人のやり取りに、鬼神おにがみが口を挟む。


輝也てるや……? てめぇら、下の名前で呼び合うような仲なのかよ? だったらなんで、ひつぎ蒼主院そうじゅいんの野郎を止めねぇんだ!?」


 両我りょうがひつぎについてどこか責めるような彼女の口調にも、灰児はいじはマイペースに見当違いな答えを返す。


「私と輝也てるやは、トクタイ入隊前に妖魔竜ようまりゅうゼルギウス討伐とうばつを行った仲ではある! だが、共にきそい合うライバルのようなものでな! あ、ちなみにそのゼルギウスを素材に造られたのがこの妖魔剣ようまけんゼルギウスさ!」


 いきなり背中に背負っていた大剣たいけんを抜く灰児はいじに、等依とういが珍しく苦言くげんていす。


「あのー盛り上がってるところ悪いんスけど……さっさと倒しに行かないっスか?」


「つーか、結局俺様の質問に答えてねぇじゃねーか! クソ野郎が! おい、等依とうい! こんなアホ共置いてこうぜ!?」


 本当に灰児はいじ輝也てるやを置いて行こうとする鬼神おにがみに、輝也てるやが声をかける。


「……君、最近鬼おにを制御できるようになったばかりで技も奥義も使えないじゃないか……」


「……よく知ってんじゃねぇか……クソが!」


 き捨てる彼女に向かって、灰児はいじが首をかしげる。


「む? 鬼神おにがみ家は代々鬼憑だいだいおにつきだから、そういう訓練もしていると由毬ゆまり様から聞いているのだが! 君はなぜそうしない?」


「痛いとこばっか突いてくんじゃねーよ! このボケが! 空飛あきひほうがまだ空気読めるぞ! いいか! 俺様の百戦獄鬼ひゃくせんごくき力極ごく振りで、昔からそれどころじゃなかったんだよ! ちきしょー!!」


「そうなのか! それは失礼した! びと言ってはなんだが、今! ここで! 私の知るかぎりの鬼憑おにつきの技について教えよう! うむ! そうした方が効率的だ!」


 あっさりと、とんでもないことを言い出す灰児はいじ輝也てるやひたいに手をやり、等依とうい鬼神おにがみは顔を見合わせ同時に声を上げた。


「「はぁ!?」」


「あ、頭沸いてんのか、てめぇ!」


「む? なにかおかしいか? すまないが私はそういうのにうといのだ! 赦せ!」


 どこまでもマイペースな灰児はいじに、等依とうい鬼神おにがみは今日何度目かわからないため息をいた。

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