第38話 新たな任務

「おせぇーぞ」


 五奇いつきがEチームの待機室に着くなり、鬼神おにがみ小言こごとを言われてしまった。それを等依とういがたしなめる。


「まぁまぁー五分前には来たんスから~」


十分じゅっぷん前に着くのが基本だろーが! リーダーならちゃんとしろや!」


 食ってかかる鬼神おにがみに、五奇いつきも返す言葉がなくどうしたものかと思っていると、空飛あきひが口を開いた。


「あの……それだと毎回ギリギリな僕は、一体どうなるのでございましょうか?」


「……てめぇはもう、そーゆうもんだろ? んで? 遅れた理由はなんだよ?」


「っ! そ、れは……。その……親の見舞いだよ。ま、まぁ、今度から気を付けるからさ! 鬼神おにがみさん!」


 少し言葉に詰まりながらもそう答えれば、さすがの鬼神おにがみも何かを察したらしく、追及することをやめた。


「ところで、教官おそいでございますね?」


 空飛あきひが話題を変えると、五奇いつき達は軽い雑談を始めた。


 ****


 齋藤が室内に入り四人を確認すると、今回の召集内容について話し出した。


「今回の任務内容を説明する! "名もなき妖魔ようま"どもの掃討そうとうである!」


 その言葉に、鬼神おにがみが舌打ちをする。


「チッ。雑魚ざこかよ……」


 そんな彼女に対し、齋藤が鋭い視線をやる。


雑魚ざこと思って抜かるなよ? その数は膨大ぼうだい!」


「ぼ、膨大ぼうだいでございますか!?」


 空飛あきひが困惑したように言うのと同時に、等依とういく。


「……場所はどこっスか?」


「山岳地帯の洞窟内だ。地図と車の手配は済んでいる! では出動せよ!」


 いつも通りの齋藤のあつに、五奇いつき達は各々おのおの声をあげる。


 四人の返事に齋藤は満足げにうなずくと、等依とういに車のカギを渡した。


 ****


 駐車場に着くと等依とういが運転席に座りながら、五奇いつきに声をかける。


「さってーと? 五奇いつきちゃん、地図ナビよっろ~」


「はい! 等依とうい先輩、運転よろしくお願いします!」


 そう五奇いつきが答えれば等依とういはウィンクをし、鬼神おにがみ空飛あきひが後部座席に乗り込んだのを確認すると、車を発進させた。


 ****


「……ここかぁ。なんか、不気味だなぁ?」


 山岳地帯入り口付近の駐車場に車を置き、徒歩で目的地まで来たところで思わず五奇いつきはそう口を開いた。

 山をくりぬいたかのような洞窟から、奥にうごめく妖魔ようま達の気配を感じる。

 五奇いつきの独り言を聞いていた空飛あきひが深く頷き目を輝かせる。


「まさにホラーのようでございますね!」


 三人は思わず絶句してしまった。しばらくの沈黙の後、五奇いつきが誤魔化すように言う。


「……みぎわ様の加護はすでに受けているし、みんな準備はいいですかね? この中に入りますよ!」


 四人はうなずき合うと、指定された場所、深く暗い洞窟内へと足を踏み入れた。

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