第34話 初任務完了と

 『爆炎ばくえん妖魔ようま』をなんとか倒すことに成功した五奇いつき達は、疲れを癒すべく、報告書をまとめる前に休憩することにした。


「……しんど……」


 開口一番かいこういちばん、そう言って待機室にあるソファーへ等依とういがダイブする。そんな彼に、鬼神おにがみしぶい顔で言う。


「おい……だらしねぇだろうが!」


 乱暴に近くの椅子に座ると腕を組んで、睨みつけた。


「んで? 今回はあのセンコーのでなんとかなったが、これからどうすんだよ? 何度も同じ手が通じるとは思えねぇぞ?」


「それを鬼神おにがみさんが言うのでございますか?」


 空飛あきひが言えば、鬼神おにがみの表情が一層険けわしくなる。


「あ……も、申し訳ございませんでした!」


 余計な一言だったことに気づいた空飛あきひが謝れば、鬼神おにがみはそっぽを向いてしまう。その様子に、五奇いつきは苦笑いを浮かべながら言う。


「あははは……まぁでも、今後の事を考えるのは確かに大事だいじだし、それに……乱入して来た彼のこともあるし……」


 全員が沈黙する。結局、あの赤髪の青年は再び現れることなく、何者だったのかわからずじまいだ。


「……ナイス武器な彼、結局どーしたんスかね~?」


 ソファーから上半身だけ起こした等依とういがそうけば、五奇いつきあごに手を置いて考えながら答える。


「んー? 『爆炎ばくえん妖魔ようま』みたいに、強者きょうじゃを求めているわけでもなさそうでしたね……確かに、なんだったんだろう?」


「なもん、考えたってしゃあねーだろうが……」


 こぶしを握りしめながら、力なく言う彼女に五奇いつきたずねる。


百戦獄鬼ひゃくせんごくきの制御のこと、だよね?」


「……そうだよ。わりぃか……!」


「いや、悪いとかの問題じゃないけど……」


 それっきり、二人の会話が続かない。しばらくして、黙っていた空飛あきひが手をあげる。


「あの……僕も黒曜こくようの力を制御した方が良いかも……なんて思ったりしたのでございますが……」


 一呼吸おいて、三人が見守るなかこう告げた。


「実は僕も、どうやったら制御が可能なのか、わからないのでございます。はい」


 ****


 休憩を終え、四人が報告書を提出して帰宅できたのは、昼頃だった。休んだとはいえ、初めての実戦。精神的な疲れも残ったため、各々おのおの自室へと戻っていく。そんななかで、鬼神おにがみ五奇いつきに向かって珍しく声をかけてきた。


「……おい」


「えっ? なに、かな?」


 おそるおそる五奇いつきけば、彼女は顔をせたまま、静かな口調でこう告げた。


「ちょっとツラ貸せや……」


 物騒な物言いとは裏腹な沈んだ声が五奇いつきの耳にやけに残った。

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