第32話 師の教え

「……おい、誰だコイツは?」


 鬼神おにがみ威嚇いかくするように言えば、ルッツは五奇いつき以外の三人に向かって自己紹介を始めた。


「僕はルッツ、しがない退魔師たいましさ。そして、五奇いつき君の先生と言ったところかな? よろしく。鬼神乙女おにがみおとめ君に夜明空飛よあけあきひ君に、蒼主院等依そうじゅいんとうい君」


「よっろ~っス。んで? 五奇いつきちゃんのおっししょーさんが、どーしたんスか?」


 こんな時でも態度の変わらない等依とういに対し、ルッツは気にすることなく答える。


「さっきも言った通り、ほんのアドバイスをしにね? 聞けば、任務が上手くいっていないようだね?」


「な、なぜご存じなのでございますか!? あ、いえ、トクタイのおかたでしたら知っていてもおかしくないでございますね……失礼いたしました」


 一人で完結して謝る空飛あきひに、ルッツが穏やかに声をかける。


「まぁまぁ。確かに僕はトクタイの人間だけれどね? 『爆炎ばくえん妖魔ようま』とやらのことを考えようじゃないか」


 その言葉で、昨日のことを思い出した四人は沈黙してしまう。その様子を見かねてルッツがある提案をした。


「ふむ。君達は視野が狭くなっているようだね? では、先生からのアドバイスをば。いいかい? ?」


 ****


 その頃。

 『爆炎ばくえん妖魔ようま』はまとった炎を揺らしながら、記念公園の中を闊歩かっぽしていた。その目的はただ一つ。


「おいおいおいィ? どこにいるんだァ?」


 昨日出会った赤髪の青年の無駄のない動き、攻撃力の高さを思い出し、妖魔ようま武者ぶしゃぶるいする。


「なにもかもォパーフェクトだァ! 出て来いよォ!」


 適当に暴れていればとも思ったが、


 そう思いこの場所を選んだのだが、現在、人の気配も妖魔ようまの気配すらしない。


(あァ? けっこう色々ぶっ壊したはずなんだがなァ? なんでいないィ?)


 疑問に思いながらも、『爆炎ばくえん妖魔ようま』は手当たり次第に燃やしていく。


 ****


「……『爆炎ばくえん妖魔ようま』……。マジであのルッツとか言うヤツの言う通りにするのかよ?」


 鬼神おにがみがそうけば、五奇いつきが静かに答える。


「ルッツ先生は謎が多い人だけど、信用できると思う。それに、他に手も思いつかないしさ」


 四人は今、等依とうい式神しきがみである火雀応鬼かがらのおうき氷鶫轟鬼ひとうのごうきにそれぞれ乗せてもらっている。その方が広い公園内を移動しやすいと判断したからだ。


「あひゃあ……それにしても凄まじい炎でございますね……。僕、と言いますか、黒曜こくようはよく戦えたなぁなんて思います。はい」


「まぁまぁ、過去っスよ。かーこー!」


「よし、降りますか……。作戦通りに行きましょう」


 五奇いつきは少し声を張り上げながら三人に声をかけると、暴れまわっている妖魔ようまの前へと降り立った。

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