第28話 突然の

(うっ……息が……。でもそこまで熱くない?)


 炎の竜に飲み込まれた五奇いつき空飛あきひだが、熱さこそ感じられどダメージはそこまで深刻ではなさそうだった。


みぎわ様の加護のおかげか!)


 五奇いつきは炎の中、いまだ意識を失ったままの空飛あきひを近くに寝かせる。悠長ゆうちょうにしている時間などなかった。


参弥さんび輪音りんねを構えると、五奇いつきは技を放つ。


壱銘いめい斬葬弐連式ざんそうにれんしき!」


 二振りの銃剣から青白い閃光せんこうが放たれ、周囲の炎をまたたにかき消した。


「ヒュー! やるなァ!」


 ながめていたのだろう、妖魔ようまの声が耳に入って来た。妖魔ようまは二人に向かって、ゆっくりとにじりってくる。


「いいねェ、いいねェいいねェ! たのしいぜェオレはァ!」


「俺はまったたのしくない! お前、イカレてるよ!!」


「あァ、そうだァ! オレはイカレてんだよォ! さァ、続けようぜェ!」


 まだまだ元気そうな『爆炎ばくえん妖魔ようま』の様子に、五奇いつきは焦りを隠せない。


(くっそ! どうしたらいいんだ!?)


 その時だった。見覚えのないシルエットが五奇いつき達と妖魔ようまあいだに、かぜのように割って入ってきた。


「おゥ?」


「今度はなんだ!?」


 黒いスーツに身を包んだ、赤色の長髪ちょうはつらした青年だった。彼は、妖魔ようまにらみつけるように立ちはだかる。


「お前が妖魔ようまだな。死ね」


 言うやいなや、青年はどこからか独特な形状の二対についの片刃剣を取り出し、妖魔ようまに攻撃を仕掛けた。


「ヒュー! バタフライソードかァ! いい趣味してるなァ!」


 妖魔は彼の斬撃をギリギリでかわしながら、不敵に笑う。一人と一体は、川のほうへと向かいながら攻撃をしあっていた。そのあいだ突然の乱入者により、五奇いつきはというと動揺していた。


「えっ? トクタイじゃない……よな? 何者なんだ?」


 とりあえず気を失っている空飛あきひを引きづり、安全そうな場所まで連れて行く。


(このままじゃ、任務にならない! どうしたらいいんだ?)


 頭を抱えていると、町の方向から見覚えのある二体のおに五奇いつき達のそばに上空から降りてきた。


等依とうい先輩! 鬼神おにがみさん!」


 五奇いつきが二人に声をかける。


「どもっス! んでー、えーどーゆう状況?」


「おい、なんっで半妖はんようは寝てんだよ? つーか、マジでどうなってんだ!?」


 二人と合流できたことに安堵あんどしながら、五奇いつきは状況を説明する。しばらくして、状況を理解した鬼神おにがみが口を開いた。


「……とりあえず、アイツら引き離すってのはどうだ?」


「そうしたいけど、一人は人間っぽいし、勢いが凄すぎてどうしたらいいのか……」


 五奇いつきがそう答えれば、黙っていた等依とういが、こぶしを握りしめながらも冷静な口調で言う。


「……しょうがないっスよ……。こうするしか、ない」


 そうして、動きだそうとする五奇いつき鬼神おにがみを制止した。

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