第25話 夜にとけて

 『爆炎ばくえん妖魔ようま』が現れるのは夜十時を過ぎてからだという。その情報をもとに四人は行動を開始した。

 妖魔ようまを探し出すため、五奇いつき空飛あきひ等依とうい鬼神おにがみ二手ふたてにわかれることにした。

 万が一戦闘になったら人避ひとよけの術式じゅつしきが組まれたふだを使う、無茶はしないというのを決めて黒樹くろき市内へ散っていった。


 ****


「んで? チャラ男、俺様達はどこへ行けって?」


 鬼神おにがみ等依とういけば彼は簡易式神かんいしきがみを出現させながら答える。


「んん~? とりま、人気ひとけのなっさそーな路地裏っスかねー? 騒ぎのせーかひと一人いないっしょ?」


 そう言われてみれば、人の数がどんどん少なくなってきている。そこそこ都会な黒樹くろき市では、こんなに人がいないのは珍しい。その事に気付いた鬼神おにがみは舌打ちをする。


「……それだけ被害が出てるってことかよ……」


(それを、俺様達がどうにか出来んのか?)

 

 鬼神おにがみは、自分がまだ百戦獄鬼ひゃくせんごくきを制御出来ていないことが不安で仕方がない。ゆえに不安を誤魔化すように、彼女は悪態あくたいく。


「はっ! いざとなりゃあ……暴れるだけだぜ」


「でっきーれば、それはやめてほしーっスね~」


 簡易式神かんいしきがみで周囲を警戒しながら、等依とういはそう茶化すように言う。


「うーにゃ? 路地裏わりとあるっしょ? どーっすかなー?」


「んなもん、総当たりすりゃいいだろうが! オラ、行くぞ!」


「ちょー! 鬼神おにがみちゃん、先に行かないでほしーっスね!」


 二人は路地裏の一つへと足を踏み入れた。


 ****


 その頃。

 鬼神おにがみ達とは反対側の地区に来た五奇いつき空飛あきひは、周囲を警戒しながら町を歩く。


「それで五奇いつきさん。輪音りんねの反応はいかがでございましょうか?」


 空飛あきひにそうかれ、五奇いつき輪音りんねに触れる。


「ここらへんに反応はないみたいだ。もう少し奥まで行ってみないと、かな?」


「そうでございますね。……不謹慎ふきんしんながら、ホラーゲームのようで少し楽しいでございます。ふふふっ」


 不穏な夜に似つかわしくない笑みを浮かべる空飛あきひを見て五奇いつきは思う。


空飛あきひ君って、けっこういい度胸してるよなぁ)


「どうされました? 早く『爆炎ばくえん妖魔ようま』を見つけましょう!」


 楽しげな空飛あきひに呆れながら捜索そうさくを開始した。


 ****


 気配を感じる。数は

 なかなかの上物じょうものか? 男はほんの少しの期待と願望を胸に、寝転がっていた床から身体からだをゆっくりと起こす。

 寝方ねかたが悪く、すっかり硬くなった身体からだをほぐすためストレッチをすると、両手のこうを合わせ、ギラついたひとみで、男は一人呟いた。


たのしませてくれよなァ、刺激が足りねぇんだァ」


 その声はどこまでも、放出ほうしゅつしている炎とは逆に冷めていた。

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