第一章 初めての任務編

第24話 初めての任務

 あれから一週間が経った。そのあいだ、特にいつもと変わらず日々が過ぎて行った。


(解決出来ていない問題も、そのままなんだよなぁ……)


 たまごサンドを食べながら、五奇いつきはそんなことを考えていた。今日はいつもより珍しく遅くに起きたためかリビングに等依とうい空飛あきひ鬼神おにがみの姿はなく、各々おのおの自室にいるようだった。

 久々の静かなリビングでのんびりくつろぐ。今日は更に珍しい事に集合が午後からなのだ。


(結局、鬼神おにがみさんのおにの制御は出来ずじまいだしなぁ)


 あの後も、彼女のおにである百戦獄鬼ひゃくせんごくきの制御は上手うまく行かず、どう暴走させないかが課題になっているのだが。


(このままだと、チームとして成立しないし……。でもなぁ……)


 頭を悩ませながら食べる食事ほど、美味しくないものもない。そう思い直した五奇いつきは、無心で食事をることにした。


「ふぅ。ごちそうさまでした」


 食べ終わった五奇いつきは時計を確認して、時間がまだあるため自室へと戻って行った。


 ****


 その頃。

 自室にて鬼神おにがみはベッドに寝転がっていた。その表情にはいつも五奇いつき達に見せている強気つよきさはなく、ただのかよわい一人の少女そのものだった。


「ちきしょう……」


 そう彼女はぼやく。自分でも本当はわかっているのだ。心がとてつもなく弱いということに。


(あの時、俺様……乙女おとめ百戦獄鬼ひゃくせんごくきを……百鬼びゃっきを拒否したから? だから言うことを聞いてくれねぇのか……?)


 心当たりはある。だが、勇気が出ない。そんな悶々もんもんとした思いを抱えながら、彼女はいつも一緒に寝ているぬいぐるみを抱きしめる。その目には涙が浮かんでいた。


 ****


全員揃そろったな? 時間通りだ、いいだろう! さて、今日の召集が午後だったのには理由がある! 貴様らには、初めての任務を実行してもらう!」


 齋藤の言葉で、一気に緊張が走る。


「どうした? いつまで訓練で満足しているつもりだ? 貴様らはすでにトクタイの所属! 任務を果たさずして存在意義などないと知れ! では、概要がいようを説明する!」


 有無を言わさない迫力はくりょくに、四人は静かにうなずくしかない。齋藤が任務について話し始めた。


「今回貴様らにせられた任務は二つ! 一つは、最近この近辺きんぺんを騒がせている『爆炎ばくえん妖魔ようま』についての調査! そして一つは『その妖魔ようま討伐とうばつ』である!」


 空飛あきひが手をあげてく。


「あの教官! 『爆炎ばくえん妖魔ようま』というのは一体何者なにものなのでございましょうか?」


 その言葉に、齋藤が勢いよく答える。


い質問だ、夜明空飛よあけあきひよ。今から渡す資料に目をとおせ!」


 そう言われ、資料が四人に手渡された。そこには『爆炎ばくえん妖魔ようま』についての概要がいようと被害報告が書かれていた。


 資料によると、自身を『爆炎ばくえん妖魔ようま』と名乗る黒人こくじんの男が黒樹くろき市内に出現し、通り魔的に民間人を襲い、死者が出ているとのことだ。

 その妖魔ようまの特性は、現在確認されいているかぎりだと『夜間やかんに活動』し、『被害者は全員焼けている』という。


「貴様ら、資料は読み終わったな? よし、ならばすぐにでも任務についてもらう! 行ってこい!」


 待機室から四人は出て行く。いよいよ……実戦だ。

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