第23話 鬼憑き

五奇いつきちゃん、おっつ~」


 等依とういに声をかけられ五奇いつきが手を振ると、鬼神おにがみがいつも通りの態度でいてきた。


「おい、めぼしいのは見つかったかよ?」


「ごめん、見つからなかった。二人はどうでした?」


 そうき返せば、等依とういが横に首を振り、鬼神おにがみが舌打ちをした。それが全てを物語ものがたっていた。二人も見つからなかったようだ。


(っていうか、鬼神おにがみさんはホントにさぁ……うん)


 内心で不満を漏らしていると、遅れて空飛あきひがやってきた。


「皆様、大変お待たせ致しました。”鬼憑おにつき”についての情報でございますが、僕が探しましたところ、このファイルしか見つからず……」


 そう言って、空飛あきひが一冊の古びたファイルをテーブルに置く。


「なっ!? やるじゃねぇーか半妖はんよう!」


「ひゅ~! 空飛あきひちゃんてば、情報収集むいてーんじゃないスか? ナイッス~!」


空飛あきひ君、凄いよ! 早速見てもいいかな?」


 鬼神おにがみ等依とうい五奇いつきがそう口々に言えば、空飛あきひが照れ臭そうな顔をする。


「あばば、あまる光栄でございます? そ、それよりも資料をご覧ください!」


 誤魔化すように彼が資料を開けば、そこには『”鬼憑おにつき”についての推察すいさつ』と書かれていた。


「えーっと……」


『”鬼憑おにつき”とは、鬼神おにがみと呼ばれる一族のみに発現する能力のことであり、妖魔ようまの一種にして不可視ふかし異形いぎょうおに”と呼称こしょうする存在をその宿やどしているもの達の総称そうしょうである。そして、共通するのは、”おに”は宿主やどぬしの精神と深層意識しんそういしきで繋がっており、また、それがえんとなり、存在を維持しているものと考えられる。よって、このしょにおいては、鬼憑おにつきとおに精神下せいしんかでの繋がりを推察すいさつする』


 五奇いつきが冒頭を読み上げれば、鬼神おにがみが続きをうながすかのようにく。


「おい、必要なとこだけでいい。なんかねぇーのかよ?」


 五奇いつきは資料をめくり、めぼしそうな箇所かしょを探していく。そのあいだ等依とうい空飛あきひに声をかけた。


空飛あきひちゃんは中身読んでないん?」


「あ、はい。その、皆様とお読みした方がよろしいかと思いまして。はい」


 空飛あきひが答えた後、黙って資料を読み込む。しばらくして、五奇いつきが資料をめくり終わった。


「うーん、結論から言うと……『鬼憑おにつきのおに宿主やどぬしの精神に依存する』らしいですね? それを鬼神おにがみさんに当てはめるとなると……」


「つまーり、鬼神おにがみちゃんのメンタルをどーこーする感じっスかね?」


 五奇いつきの言葉に等依とういがそう言えば、鬼神おにがみが舌打ちをしたのが聞こえた。


「……出てくわ」


 鬼神おにがみは資料室から一人で出て行ってしまった。その後を追うか考えた後、「一人にしよう」と結論づけた三人は、資料を戻してEチームの部屋、待機室へと戻ることにした。


鬼神おにがみさんの精神になにかあるとしたら、それは俺達に解決できるものなんだろうか?)


 五奇いつき脳裏のうりにそんな思いがよぎる。なぜなら、"自分は嫌われているから"。自覚すればするほど落ち込みそうになる。

 その様子に気づいたらしい等依とういが声をかけてきた。


五奇いつきちゃん? どーしたんスか?」


「いや、なんでもないです! 早く戻りましょう!」


 待機室に戻っても、鬼神おにがみの姿はなかった。心配だが、どうにもできない自分が五奇いつきにくかった。

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