第18話 トラブル発生

「コイツ! でかくなりやがった!?」


 鬼神おにがみが叫ぶと同時に、妖魔ようまの巨大化に耐えられなくなった天井が崩壊していく。


「やっばーいっス! みんな、オレちゃんとこ集まって!」


 言われるがままに等依とういの元へ集まると、火雀かがら氷鶫ひとうが守るように立つ。


「"結界けっかい発動"! みんなを守っれーっス!」


 あっという間にドーム状の透明な結界けっかいが張られ、落ちてくる瓦礫がれきから守ってくれた。五奇いつき不謹慎ふきんしんながら思う。


(ホント、なんでこの人Eチームなんだろう?)


 そう思っている間にも、建物はもろくも崩れ、辺りは瓦礫がれきだらけとなった。肝心かんじん妖魔ようまはと言うと、とてつもなく巨体になっていた。


「な!? なんて大きさなのでございましょう!」


 あまりの大きさに空飛あきひが珍しく大声を上げたと同時に妖魔ようまが彼を狙って、近くに落ちていた瓦礫がれきを投げ付けた。


「あひゃあ! あ、あ、危ないでございますです!?」


 慌ててける空飛あきひを見ながら、五奇いつき火雀かがらが左右から攻撃を加える。だが、いとも簡単に振り払われてしまった。


「クッソが! 訓練にしちゃあ、鬼畜きちくすぎっぞ!?」


 そう叫びながら、鬼神おにがみが飛び上がって妖魔ようまの脇腹に蹴りを入れ、その痛みに更に怒った妖魔ようま鬼神おにがみの右足を掴み、彼女を思いきりぶん投げた。


「うぐっ!」


 投げられた鬼神おにがみが吹っ飛んでいくのを見た等依とういが、慌てて氷鶫ひとう火雀かがらに指示を出した。


氷鶫ひとう! 鬼神おにがみちゃんを! 火雀かがら! 五奇いつきちゃんと空飛あきひちゃんをバックアップっス!」


 二体のおにうなずき、それぞれ行動に移す。


空飛あきひ君! 連携で行きましょう!」


「りょ、了解でございます! では!」


 五奇いつき空飛あきひは目を合わせ呼吸を整えて、攻撃を仕掛ける。


きん退魔術式たいまじゅつしき! 弐銘にめい覇斬牙はざんが!」


「行かせていただきます! 黒曜抜刀術こくようばっとうじゅつ! 零閃華れいせんか!」


 それぞれが飛ぶ斬撃ざんげきを放つと、妖魔に命中した。しかし……。


「ぐあああああああああ!!」


 再び咆哮ほうこうを上げた妖魔ようまは、地団駄じたんだを踏みだした。その振動で、三人は立っていられなくなり地面に膝をついた。


五奇いつきちゃん! 空飛あきひちゃん! えとーえとー火雀かがら! 攻撃連打っス!」


 振動の影響を受けながらも、等依とういの指示を受けた火雀かがらが向かい、妖魔ようまが振り上げたこぶしを両手で受け止めた。膠着こうちゃく状態になる妖魔ようま火雀かがらを見ながら、五奇いつきは考える。


(どうする? 揺れは収まったし、動きも火雀かがらが止めてくれてる! でも、攻撃が効いていない!)


 その時、鬼神おにがみが吹き飛ばされた方角から、"なにか"が勢いよくやってきて、妖魔ようま強烈きょうれつな打撃を与えた。


「なっ!?」


何事なにごとでございましょうか!?」


「こっれーは! 鬼神おにがみちゃんの"おに"っスね? つーことは……暴走かぁ~!!」


 驚く五奇いつき空飛あきひとは裏腹に、冷静に言う等依とういのもとに鬼神おにがみを抱えた氷鶫ひとうが現れた。


鬼神おにがみちゃ……気絶してるぅー」


 "おに"のあるじ鬼神おにがみは完全に気を失っているようで、ピクリとも動かない。その結果なのだろう、半透明な人型の"おに"、百戦獄鬼ひゃくせんごくき容赦ようしゃなく妖魔ようまを殴りまくっていた。その威力は凄まじく、先程の一撃でよろけた妖魔ようまにどんどんダメージが入って行く。


 その姿はまさに、"修羅しゅら"のごとく。一ミリも入るすきの無さに、三人と二体のおに達は茫然ぼうぜんとするしかない。


「あれが鬼神おにがみさんのおにでございますか……。なんとも恐ろしい、エネルギーのかたまりのようでございますね」


「このままじゃ、あのおにに全部やられてしまう。それじゃ訓練にならないからなぁ……止めましょう!」


「りょーかいっス! 鬼神おにがみちゃんのことは、おっまかせあ~れ!」


 各々の役割を把握した三人は、動き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る