第10話 各々の力

 午後十三時。

 時間きっかりにそろった五奇いつき等依とうい空飛あきひ鬼神おにがみの四人は、齋藤からの指示を待つ。

 どうやら、別行動をしていた空飛あきひ鬼神おにがみには個別にメッセージが送られていたようで、「だから時間ピッタリだったのか」と五奇いつきは納得していた。


 齋藤は思ったより早く室内に入って来て、四人を確認すると口を開いた。


「うむ、心がけやよし! では、あらためてこれからについて説明するとしよう。まず、チームワークを確立させるために貴様らには近日中に、こちらが用意した一軒家で共同生活を送ってもらう! 文句は聞かん。次に、最低でも三か月は訓練期間とする! 気を引き締めろ!」


 その言葉に、鬼神おにがみが大声をあげる。


「はぁ!? こんなむせぇ野郎共と暮らせってのか!? んなもんお断りだ!」


 心底嫌そうな彼女に対し、齋藤が鋭い目つきと口調で言った。


鬼神乙女おにがみおとめ……。文句は聞かんと言ったはずだ。なにより、この中で一番貴様が弱い! それすらもわからんのなら、辞めてもいいぞ?」


 どこか試すような、それでいて厳しい言葉に、鬼神おにがみが食ってかかる。


「なっ!? 俺様が弱いだと!!」


「そうだ! 貴様の素質自体は認める。だが、その力を全く制御出来ていないであろう! ただ力に任せているだけの者が、強者きょうじゃになれると思うてか! 世の中を舐めるのも大概たいがいにしろ!」


「くっ……そが……」


 力なくそう言い返すと鬼神おにがみは黙ってしまった。どうやら心当たりはあるらしい。なにか言葉をかけるべきか悩んだ五奇いつきだったが、結局言えないまま、話は進んで行った。


「コホン。では、今日は貴様らの互いの能力、戦闘力について把握してもらう! 演習場えんしゅうじょうに行くぞ、着いてこい!」


 齋藤の後に続く形で、四人は部屋を一端後にした。


 ****


 演習場えんしゅうじょうは、五奇いつき達がいたビルから徒歩十分ほどのところにあった。ドーム型でテニスコート四面分よんめんぶんの広さの中に入れば、齋藤が四人に声をかける。


「準備はいいか? これより演習を行う! まずは五十土五奇いかづちいつき! 貴様からだ!」


 齋藤に指名された五奇いつきは、驚き戸惑いを隠せなかった。


「えっ? 俺からですか?」


「そうだ! 貴様がこの中でバランスが一番いい! その力を示してみよ!」


 ハッキリと言われてしまい、五奇いつきは反論できなかった。覚悟を決めた五奇いつきは前に出て、参弥さんび輪音りんねを構える。それを確認した齋藤が、右手をあげた。


「ターゲット射出! 五十土五奇いかづちいつきよ! 攻撃をしてみよ!」


「は、はい! 始めます!」


 土偶どぐうの形をしたターゲットが三体射出しゃしゅつされ、五奇いつきめがけて飛んでくる。祓力ふつりょくを乗せた参弥さんびのブレードを放ち、一気に三体を払い落とした。

 離れたところから様子を見ていた等依とういの声が五奇いつきの耳に入る。


「ひゅ~! 五奇いつきちゃんやっる~し、変わってる武器っスねー」


 呑気な等依とういの言葉に、五奇いつきは返事をしている余裕はなかった。必死に思考を巡らせる。


(三体は払い落したけど、これは起き上がってくるかもしれないし……やるか!)


輪音りんねセット! 金の術式きんのじゅつしき! 壱銘いめい斬葬ざんそう!」


 射出しゃしゅつされてきた五体を退魔術式たいまじゅつしきで一気に撃ち倒すと、カートリッジを素早く交換する。続いて四体が射出しゃしゅつされ、五奇いつきめがけて光線を放ってきた。それを右に左にかわして、弾丸を放つ。


参銘さんめい閃牙せんが!」


 閃牙せんが斬葬ざんそうのような一直線の攻撃とは違い、何発もの弾丸と威力のある衝撃波を同時に放つ技だ。一発で四体のターゲットをを撃墜げきついさせると、またしても等依とういの関心したような声が上がったのが聞こえた。


「よし。まぁまぁ仕上がっているな? 五十土五奇いかづちいつきよ、下がってよいぞ!」


 齋藤からの言葉で五奇いつきは攻撃体勢をやめ、みんながいる所へと戻る。それを確認した齋藤が告げる。


「次は、蒼主院等依そうじゅいんとうい! 貴様だ!」


 指名された等依とういはのんびりと伸びをした後、準備運動をしながら前に出た。


「うーし、オレちゃん頑張っちゃうっスよ? まぁ対して強くねぇんスけど……」


「準備はいいか? では、射出しゃしゅつ!」


 齋藤が再び右手をあげ、ターゲットが射出しゃしゅつされる。等依とういは真剣な眼差しで、対峙する。


「さぁて、やるっスか!」

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