第7話 顔合わせを終えて

「では、蒼主院等依そうじゅいんとうい夜明空飛よあけあきひ鬼神乙女おにがみおとめ五十土五奇いかづちいつき。貴様らをあらためて特殊対妖魔殲滅部隊とくしゅたいようませんめつぶたいの九十四期、Eチームとして認めよう! 隊服を支給するから各自、更衣室ですぐに着替えて来い! 今すぐにだ!」


 齋藤にせかされ、男女に分かれて更衣室に入る。集合した部屋がEチーム専用で、隣に更衣室やトイレなどがあるようだった。更衣室に入ると、学校で馴染みのあるロッカーが四つ壁に沿って置かれていた。


「さってと~、オレちゃんはどこでもいーけど? お二人さんはどーするっスか?」


 等依とういうながされ、五奇いつきが一番奥、空飛あきひが真ん中を選んだ。それを確認した等依とういはにこやかに、残った扉側のロッカーの前に立った。


(この人、口調とかはアレだけど中身はけっこういい人なのかも?)


 そんな感想を抱きながら、五奇いつきはロッカーを開け、隊服が入ったトランクを手に取る。中を確認すると、綺麗にたたまれたえり付きの黒に白いラインが入った上着に黒いスラックス、そして「Team.E」と書かれたバッジが入っていた。


(うん、着心地は悪くないな。見た目のわりに動きやすそうだし)


 一人納得しながら着替え終えれば、等依とういが口笛を吹きながら、二人に向かって話しかける。


「そーいや、おと……鬼神おにがみちゃんの隊服ってどんなんかな~? スカート? いや、履かなさそーじゃね? どー思うっスか?」


(……やけにフレンドリーだなぁ)


 五奇いつきがあまりのフレンドリーさに困惑していると、空飛あきひ等依とういに向かって遠慮えんりょがちに声をかけた。


「あの、そんな事を話してなどいないで、さっさと行きませんでしょうか? 着替え終わったのにモタモタしていたら、教官に怒られかねません……と思います。はい」


「確かに~! じゃあ行くっスか!」


 等依とういの言葉に同意し、更衣室から元いた部屋へと戻る。


「おりょ? 教官いなくねー? あと鬼神おにがみちゃんも!」


 齋藤と鬼神おにがみがいない。困惑して三人で顔を見合わせていると、女子更衣室から小物が次々と飛んできて壁に勢いよくぶつかっていく。


「えっ?」


「は?」


「えぇ……」


 等依とうい五奇いつき空飛あきひの三人が思わず声を漏らせば、女子更衣室からものすごい怒鳴り声が聞こえてきた。


「ざっけんな! イマドキに、なんでスカートなんざ支給されなきゃなんねーんだ! 俺様に恥かかせようってか!? あぁ!?」


 彼女の服装がスカジャンに短パンだったことを思い出し、三人はなんとなく納得した。

 しばらくして、五奇いつき達が待機している部屋の扉が開き、女性隊員が慌てて女子更衣室に入って行った。


「ちっ。最初から用意しとけってんだよ……。着るから出てけや!!」


 鬼神おにがみの言葉が聞こえた後、女子更衣室から齋藤と女性隊員が出てきた。大人しくしている三人を確認した齋藤が口を開く。


「貴様らは不満もなく、着替え終わったようだな。よろしい。今は鬼神乙女おにがみおとめの着替えを待つとしよう」


 少し疲れた声の齋藤に言われ、五奇いつきも他の二人も苦笑するしかなかった。


「とっころで~? チームならリーダーとかどーすんスかね? 年齢なら一応オレちゃんだけど~?」


 等依とういが話題を変えた。彼の言う通り、チームならリーダーがいるのが自然だと五奇いつきも思った。少しの沈黙の後、空飛あきひが手をあげる。


「……僕は、リーダーに向いてないと思いますので、はい」

 

 空飛あきひの言葉に等依とういも深くうなずいた。


「オレちゃんも向いてないと思うんスよね~。で、鬼神おにがみちゃんもそうっしょっ? ってなると~」


 二人が五奇いつきをまっすぐに見つめてくる。


「えっ……お、俺!?」


 思わず自分をしながら五奇いつきけば、齋藤もうなずく。


「貴様らの意見と、バランスを考えても五十土五奇いかづちいつき、貴様が適任と考える。やれ」


(選択肢……はなさそうだな)


 心の中でぼやきながら、五奇いつきはリーダーになることを渋々しぶしぶ受け入れた。


 ****


「……確かに俺様もリーダー向きじゃねぇけどよぉ? なんでよりによって横取り野郎なんだよ……」


 着替え終わった鬼神おにがみが早速不満を漏らす。だが。


「着替えごときでダダをこねていた貴様に、選択権などない。大人しく受け入れろ」


 齋藤は冷たく言い放ち、話を続けた。


「よし、祓神ふつかみ様である汀守神みぎわもりのかみを紹介しよう」


 部屋の奥、閉じられていた重厚じゅうこうな扉を齋藤が開けると、白髪はくはつで十代前半くらいの白い着物姿の少年がいた。

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