第10話

「ねぇ、聞いた!? 昨日の話!」


「知ってる! エイル様と選定の子の話でしょ!?」


「凄いよねー、どうなっちゃうんだろ?」


「うーん、わかんないよねー。まぁ! 私達には関係ないけど!」


昨日の話は全校生徒に伝わった。

道行く生徒がずっとその噂話をしている。


「たしか、レイって言うんだっけ選定の剣の子。どうやって選ばれたんだろうねー」


「さぁ? でも身の程しらずじゃない? 私だったらその剣返して逃げ帰るなー」


……他人事だと思って好き勝手言いやがって。

あんたがもしそんな事になってみなさい、自分の未来の富と名誉、過去の努力を一瞬で奪われる恐怖心を克服できるのかしら。


「よーっす、シェリー」


「おはよう、シェリー殿」


「あっ、ファイン様にエイル様」


噂話をする彼女達を凝視していたら後ろに居た2人に気づかなかった。


「怖い顔してたぞー」


「そっ、そんなことないよ?」


目をパチリと瞬きして上目遣いで黒目をあっちこっちに動かす私を見て、にやにやするファイン。


「シェリー殿、彼女は……?」


そんな私にエイルが気まずそうに問いかけた。


「……それが、まだ部屋に」


朝迎えに行ったら、今日は無理と答えられた。

この様子じゃ暫くは落ち込んだままだと思う。

早く元気になって欲しいけど、こればっかりはどうしようもない。


「そうか……」


「エイル様、レイの事どう思ってるんですか」


「どうも思ってない。ただ……彼女が本気で王を目指すなら私は彼女と真剣に向き合うだけだ」


「まーまー! その話は後で考えようぜ! 楽しい青春を責任とか使命とかで潰すのは勿体ないだろ!」


難しい顔をする私達の間に割り込み、肩を抱くファイン。


「なっ! とりあえずシェリーは俺らの友達って事で今日城に来い!」


「はぁ!?」


「あと、様付け禁止な。でないとひのきの女って呼ぶからな。兄貴もそれでいいだろ?」


なっ、何言ってんだこいつ!

とんでもない提案しちゃって!

滅茶苦茶嬉しいけど、何だって!?

子供の頃から憧れてたあの場所に、簡単に行けるってどういう事!?

あの頃の私なら、失神する!


「あぁ、それでいい。たまにはいいこと思いつくじゃないか」


「だろ? じゃあ決まりな明日は休みだし外出簿書いて許可とって俺ん家泊まってけ」


お城を俺ん家って軽々しく言うな!

しかもお前っ、ええっ!?


「じゃあそういう事で兄貴連絡よろしく、俺らはブロンズ学科だから」


そんなこんなで歩いていたらいつの間にか教室の前。

このオレンジ髪、私の心境も知らないで勝手にポンポン決めやがって!

そんな嬉しいこと一遍にされたらキャパオーバーするっての!

しかも、私なんかがいいの!?

ただのネタ枠だよ!?

最弱アイテム拾った日陰の人間だよ!?


「おい、私に押し付けるな。……まぁいい。そうだシェリー昼休みは彼女がいないと1人だろう? このバカを連れてテラスに来るといい、一緒にランチでもいかがかな?」


『おぎゃああああああ!!???』


「気遣いありがと、そうさせてもらうね」


顔に出さずに絶叫し、表面上ではさわやかに笑ってそう言った。

心と口が別々で良かったと思う瞬間だった。



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主要人物の殆どが伝説級の武器なのに、なんで私だけひのきの棒なんですか!? あぱろう @apa6gou

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