第13話 高山昴の過去

『スバ君ってさ、平井胡桃ちゃんのこと好きなの?』


白峰の急な質問に俺は脳の機能が停止する。


「え、急になんで?」

『いやぁ〜、普通に学校で見ててそう思ったからかな〜てかいっつも一緒にいるしさ。胡桃ちゃんのこと好きなのかなって』

「好き、、って聞かれると、、、」


『好き』という言葉を聞くと俺はあの黒い過去を思い出す。あの中学生の時の黒い過去を。思い出したくない。思い出しただけで吐き気がしそうだ。


「俺、人を好きになれないんだ」


 高校生になって初めて打ち明けた。それが白峰になるとは自分でも思っていなかったし、そもそも打ち明ける事になるとも思っていなかった。


『え、好きになれないん、、だ』

「うん。って言うよりかは怖いっていう方が正しいかもしれない。」

『それはウチが理由とか聞いても良い感じ?』


この黒い過去を打ち明ける時が来たのか……




♦︎




 時は遡り、中学3年生の冬。俺には好きな人がいた。好きになった理由は特にない。学校生活をたまに送る中で、彼女といる時が1番自分を出せた、気がしていたから。


「美歌。クリスマスの予定ってもう決まってる?」

『え、予定?そうだね、まず朝の7時に起きて〜』

「いや、そんな詳細の予定じゃなくて!!」


 彼女の名前は清水美歌。いわゆる天然と呼ばれる部類の女の子だった。彼女と話している時は浮遊空間にいるような感覚。ふわふわしていて悩みをも忘れさせてくれる感覚。そして彼女の笑顔に日々癒される毎日だった。


「クリスマスさ、、一緒に過ごそうよ」

『うん、いいよ。』


 僕たちはクリスマスを一緒に過ごす約束をした。これが僕の初めての恋愛だった。この時俺は美歌のことが好きだった。


 時は過ぎてクリスマスイブ。クリスマスの予定を決めようと俺は美歌にずっとメールをしていた。でも、そのメールに既読がつくことはなかった。電話もかけた。でも4、5回目で着信を最後まで待てないくらい動揺していた。 


次の日に学校で会った時に俺は美歌に直接、真相を聞いた。


「美歌、、クリスマス一緒に過ごそうって、、言ったよ、ね?」

『うん。でもごめん。本当にごめん。でもこれしかなかったんだ。ごめん。』


彼女はひたすら謝っていた。


『私最低だからさ、嫌いになっても構わない。昴。本当にごめんね。』

「………」



 これは後から聞いた話だが、彼女は県外の高校に進学する予定だったようで、離れ離れになって辛い気持ちになるくらいなら関係を絶ってでも俺を悲しい気持ちにさせたくなかったらしい。それがいつも天然で優しい彼女が決意した決断だったのだ。


 俺は深く傷ついた。本当に好きだったから。彼女のことが本当に好きだった。その分目の前から消えた時の悲しみは尋常じゃなかった。


 その恋愛を境に俺は好きという感情に恐怖を覚えるようになった。勿論、可愛いや綺麗などの感情はあるが、『好き』という感情だけは違和感を覚えてしまう。自分の好きと相手の好きは必ずしも同じでは無いのだから。





          ♦︎




「だから、好きっていう感情がもう怖くて」

『スバ君……』


気づいたら白峰は俺を抱き包み込んでいた。

いつもなら胸の感触がどう、とか言うところだがこの時は何も感じなかった。


『スバ君。人には黒い過去がある。それは塗りつぶせない過去。でもね、未来は変えることができるの。人は変わる事ができるから。スバ君は悪くないし、美歌ちゃんも悪くない。優しさは時に人を傷付けてしまうこともある。スバ君にはこれから好きと思える人が必ず来るから』


白峰の言葉は透き通るようで芯に突き刺さる。





俺の目から黒い雨が一滴流れ落ちた。





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SNSで偶然出会った学年トップの美少女は、俺にだけレベチで懐いてます。 ふきゅい。 @yuiyuiyui1031

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