最恐の復讐者〜副反応で手に入れた能力〜

いっちにぃ

第1話

西暦2019年、中華人民共和国に端を発した新種のウイルスは瞬く間に世界へと広がりpandemicを起こした。

そして、それは翌年になっても収束するどころか俄然勢いを増し、ここ日本でもたくさんの死者を出した。

マスコミはこぞってこのウイルスを取り上げニュースを見れば連日この話題ばかりだ。



だが、人類もやられてばかりではない。アメリカやイギリスの会社が早々にワクチンを開発し、そのワクチンを接種することで発症させないようにしたのだ。



もちろん、ここ日本でもワクチン接種が始まったが、高齢者や基礎疾患のある方の死亡率が高い為そちらを優先し、死亡率の極めて低い俺のような若者は後回し後回しとなっていた。



このワクチンの問題点としては2回接種しなければならないことと【副反応】があることだ。

よく見られる副反応は

①…痛み

②…だるさ

③…頭痛

④…筋肉痛

⑤…悪寒・発熱

などなど



色々な考えがあるとは思うが、俺としては将来的にどうなるかの保証はないけれど、現状の副反応程度なら接種したいと思っていた。




そして、、、2021年ついに高校2年生である俺『三鍵 唯人』も接種できるようになった。

俺はもう一度目の接種を三週間前に終えた。副反応も特にはなかった。


そして、俺のクラス2-Cでも「俺明日だぜ!」「私は今日だよ」「腕いたぁい」などワクチンに関しての話題が飛び交っている。

だが、俺はその会話にまざるわけにはいかない…



(はぁ…またか…これ落とすのすげえ疲れるんだよな…)


俺の机には『陰キャ・カス・馬鹿・シネ・童貞野郎・包茎・チンカス野郎などなど』油性のマジックで落書きされていた。


俺は絶賛イジメの対象となっていた。

それもクラス全員からのイジメだ。

人間というのは集団になると誰かを蔑まなければならない性質があるようだ。

別に学校に限ったことではない。会社や老人ホームだってあるぐらいだ。



しばらく立ち尽くしている俺を見てあちこちから笑い声が起こる。

俺は無言のままハンカチを水で濡らしに行き、机を力一杯拭いた。

油性である為、少し薄くなった気がしたが全く取れてはいない。


(またエタノール家から持ってこないとな…)



一度、親にイジメを受けているから学校に行きたくないと打ち明けたことがある。

すると、父は「お前に問題があるからイジメられるんじゃないのかッ!?」と怒り狂い、母は「学校休んで勉強が遅れたらどうするのッ!?」とこれまた怒り狂った。


俺は『ああ、この人達に何を言っても無駄だな』と理解し、それ以降二度と言わなくなった。



そして昼休み、俺はさっさと違う場所へ移動するため弁当を持って教室を出ようとしたところをクラスのリーダー的グループである『矢島 光一』『遠藤 可奈子』『赤井 秋』『土井 雅』たちに捕まってしまった。


そのまま俺は校舎裏に連れていかれた。


俺を突き飛ばした赤井は

「金…早く出せよ」と言い放つ。


俺は地面に倒れ込んでしまい

「ごめん…もうお金無いんだ…ほんとごめんなさい…」と許しをこうが当然許されるはずもない。


赤井が鬼の形相になった。

「あぁん!?んじゃ、今日の俺らの遊ぶ金どーすんだよッ!いいから親の財布から抜いてでも持って来いッ!!」


遠藤が笑いながら

「コイツチョーシ乗ってんじゃね?金持ってこなきゃどうなるか教えてやろうよ」


土井も笑いながら

「さんせーっ!!ハイパー雅ちゃんキーック!!」と言いながら俺の腹に手加減無しの蹴りを入れる。


女子の蹴りといえども土井は幼い頃から空手をやってるようで無茶苦茶強い。

転げ回る俺を見てさらに赤井が背中を蹴り飛ばす。


後ろで見ていた矢島が

「顔はやめとけよ、色々面倒だからな」と言う。


俺を散々蹴りまくった2人


最後に遠藤がスマホを取り出し

「記念撮影するよー!はい、脱がして脱がして!!」と2人に合図をすると2人は俺のズボンとパンツを脱がせた。


「ぷっ、コイツ使わねーくせにでけーな!」

「ほんとほんと、切り落とした方が良いんじゃない?」と笑う。


そして、写真を撮られた。


遠藤は去り際に

「金持ってこなきゃ、コレグループLINEにばら撒くから。明日は持ってこいよ」

と言って4人は去っていった。



しばらく痛みで動けなかった俺だが、少し痛みが引くとどうせこのままじゃ授業も受けられないと思い早退した。



そして、夕方予約していた二度目のワクチンを接種しに病院へ行って接種した。

その晩から俺は39度後半の熱を三日三晩出し続け、全く動けなくなった。


当然親は病院など連れて行ってはくれなかった(期待すらしていなかったが…)

自室で生死の境を彷徨い、なんとか4日目に少し動けるようになったが学校へ行けるようになったのは丸一週間後だった。




(ああ、またアレが始まるのか…あのまま死んでても良かったかもな…)


そして、一時間目の現国が始まって15分ほど経ったときだ。

俺はふと何気なく見た床に結構な大きさのゴキブリがいることに気づいた。

他は誰も気づいていない。


近くにはあの土井が座っている。

俺は心の中で

(あのクソ土井の方へ行け!)と念じた。


すると、ゴキブリはうまいこと土井の席へと近づいて行った。かと思うと、椅子を登り始め土井の背中で止まった。



流石に後ろの女子が気付き

「キャァァァァァァ!!ゴキブリ!!」と叫んで土井の背中を指差した。


(クソッ!気づかれた…このまま土井の顔に回ってくれないかな…なんならもっとたくさんで身体中埋め尽くせばいいのに…)



土井は自分が指差されていることに気付き、ゴキブリが自分の背中にいることを知って半狂乱になった。

「だ、だれか!!取ってよ!!秋!」と言いながらぐるぐる回っている。

制服の上着を脱ぐことにすら頭が回っていない。


せっかくのゴキブリが逃げてしまうか…と思ったが、あろうことかゴキブリは背中から首へと移動し、やがて土井の顔にピッタリとくっついた。


土井は半狂乱から狂乱となり喚きながら手でそのゴキブリを払い落とした。

信じられないことに払い落とされたゴキブリは教室の壁を登り、飛んでまた土井へと向かってゆく。


「なんで!?なんで!!なんでこっち向かってくんのッ!!」


土井は逃げ回るが、執拗に追い回すゴキブリ



(あははは、ほんといい気味だ)

と思った次の瞬間、俺は廊下から異様な音を聞いた。カサカサ…カサカサ…


なんだ?と思ったと同時にあり得ない数のゴキブリの大群が教室に入ってきた。

廊下からだけではなく窓からもだ。

そして、そのゴキブリたちは他の生徒には目もくれず土井へと向かってゆく。



教室は大混乱に陥った。

男子も女子も廊下へ逃げ、その際にゴキブリをパキッと踏みつけていくが誰一人そのことを気にする者はいなかった。

とにかく自分が安全な場所へ行くことだけを考えていた。


あっという間に土井は恐ろしい数のゴキブリたちに身体を覆いつくされ、そのまま倒れた。



教師が殺虫剤でそのゴキブリを殺し回ったときには土井はもはや死んでいた。

やっと顔が見えたと思ったら土井の口や耳、鼻から大小さまざまなゴキブリが大量に出てきた。



俺は呆然としながらその光景を眺めていた。女子は悲しみに泣き崩れ、男子はゲロを吐いていたりした。

しかし、俺はクラスメイトが死んで悲しいなどという気持ちは微塵も湧かなかった。



この時の俺はまだ気づいていなかった。

これがワクチンで生死の境を彷徨ったことによる副反応の産物だということに…




※連載中の作品が他にもあるため更新遅いです。

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やっぱり復讐物が好きなんだなぁと感じた作者でした。

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