砂漠に落ちた虹色の光

 虹色の光が空から落ちた。

 地に落ちたその光は地にあった生命いのちを吸い尽くした。

 人を、動物を、植物を、地に生きるものの生命いのちをすべて吸い尽くした。

 海は枯れ、地は荒廃した。



 虹色の光の落ちた場所は砂漠となり、砂漠の中心には大きくて深い穴が空いていた。

 穴の中には闇があった。

 暗くて黒い、闇があった。

 黒闇くらやみの底に光が届くことはなく、砂漠が晴れても穴の中は暗くて黒い闇に包まれていた。



 ある日、黒闇くらやみの中からヒトが出てきた。

 ヒトは砂漠を歩き、どこかを目指した。

 歩いて、歩いて、歩いて、歩いた。

 そして、ヒトは砂漠を抜けた。

 砂漠を抜けた先でヒトは一体のロボットを見つけた。

 車輪の脚を持つそのロボットは砂漠と荒野の狭間に立っていた。

 ただひとりで立っていた。

 ロボットが動くことはなかった。

 ヒトは動かないそのロボットに名前をつけてやった。

 砂漠の手前で動かなくなったそのロボットの名は「自由」。

 ヒトは「自由」を求めてさらに進んだ。

 荒野を進むヒトの後ろには砂漠を見守る「自由」が立ち、荒野を進むヒトの前にはまだ見ぬ「自由」がある。

 そう信じてヒトは荒野を歩み出した。

 黒闇くらやみも、砂漠も、荒野も、ヒトの「自由」の前にはなんの障害にもならなかった。

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空から落ちた虹色の光 貴音真 @ukas-uyK_noemuY

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