そこにあるヒカリを求めて

 暗かった。

 ただひたすら暗かった。

 私が生まれたのは暗い場所だった。

 真っ暗で真っ黒で暗くて黒い闇の中で私は生まれた。

 黒闇くらやみの世界で私は育った。

 何年も、何年も、何年も、何年も、育った。

 やがて、私はオトナになった。



 オトナになった私は慣れ親しんだ黒闇くらやみから出ていくことを決めた。

 私は黒闇くらやみを捨てて上へ向かうことを決めた。

 私の生まれた黒闇くらやみの上には白い点がいつもひとつだけそこにあった。

 小さい頃にその白い点がヒカリというものだと教わった。

 黒闇くらやみにいるものは誰もがヒカリを恐れ、上へ行こうとしなかった。

 上へ行くことを決めた私を誰もがやめさせようとした。

 それでも私は上へ向かった。

 ヒカリを求めて上へ向かって進んだ。

 進んで、進んで、進んで、進んだ。



 ある日、私は黒闇くらやみを抜けた。

 私は求めていたヒカリを手にすることは出来なかった。

 ヒカリであると言われていた白い点は、そこに近づくほどに大きな穴となり、最後はヒカリそのものとなった。

 私はヒカリに包まれた。

 その時、黒闇くらやみは穴の中にしかなかった。

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