空から落ちた虹色の光

貴音真

荒野と砂漠の狭間にて

 僕はいつも窓の外を見ていた。

 窓の外にはいつも空があった。

 雲が空を覆う日は雲の上にある空を思い浮かべた。

 ある晩、空が虹色に輝いた。

 虹色の光が空一面を染め、やがてその光は地に落ちた。

 その光はとても綺麗で、そして、とても恐ろしかった。

 虹色の光が地に落ちたその瞬間から僕の世界は一変した。

 一瞬にして人が死んだ。

 一瞬にして生き物の生命いのちが奪われた。

 一瞬にして緑溢れる大地が消えた。

 一瞬にして豊かな海が枯れた。

 一瞬にして僕はひとりぼっちになった。



 僕以外になにもない世界で僕は生きた。

 何年も、何年も、何年も、生きた。

 やがて、僕に与えられた時間が尽きる時が来た。

 最後の瞬間を迎える前に僕はあの日の晩に虹色の光が落ちた場所へ行くことにした。

 たったひとり残された僕のたったひとりの旅が幕を開けた。

 あの日の晩に見た虹色の光が落ちた方へ向かって僕は進んだ。

 ただひたすら前だけを見て進んだ。

 進んで、進んで、進んで、進んだ

 僕の脚がカタカタ鳴った。

 でこぼこ道に脚が軋み、身体からだが揺れた。

 身体からだが揺れる度に激痛が走った。

 それでも僕は前へ進んだ。

 そして、虹色の光が落ちた場所のすぐ近くまでたどり着いた。

 そこは砂漠になっていた。

 僕のこの脚では砂漠は進めない。

 そう思った時、僕に残された時間が尽きた。

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