それでも私は……

それでも私は……

私は戦う。自分の居場所を守るために。

コクピットに身を沈め、サイドスティックとスロットルレバーを握り、ラダーペダルを踏みしめる。

HMD（ヘルメット・マウンテッド・ディスプレイ）に敵機を捉え、ロックオン。ミサイルを放つ。

敵機のコクピットに乗っているのが同胞だとしても、私は躊躇ったりしない。私の本名と同じ名前を持っていたとしても、私は迷わずトリガーを引き絞る。

同胞と言っても、顔も見たこともない人に同情することはできなかった。でも、傍で同胞を侮辱する人がいると、もしその矛先が自分に向いたら……と考えて怖くなる。

やめて、私をいじめないで……

私は私の民族が背負った過去なんて知らない。ただ、私の母はこの国の人じゃなくて、私は二つの祖国を意識しながら生きてきた。

私はこの国が嫌いじゃない。大好きなところがいっぱいある。大好きな人がたくさんいる。不満がない訳ではないけど、それは私の出自とは関係ないし、この国の人にも不満に思う人がいる。

ただ、居場所が欲しかった。私がこの国で暮らすことを許して欲しかった。だから私は、チタンとカーボンの翼で飛び、同胞を殺す道を選んだ。

私は敵国人の血を引いているけど、私の故郷はこの国だし、この国が無くなったら、私の大好きだったものも失われてしまう。

例え同胞に引き金を引くことになっても、私は戦う。私の心の故郷を守るために。

ファルケン１、エンゲージ。FOX2、FOX2……！