第3話 百年の迷子たち

夜の学校に迷いこんでぼくら迷子に。

リョウとカツジとサキちゃんの四人。

「だれが誘ったんだっけ?」

「いまさらいいだろ?」とリョウ

「この旧校舎くずれそうだね」サキちゃんがいう。

「でもくずれへんよ、ずっとくずれへんかったやん」とカツジがいった。

「そうだね」

「夜って長いね」

「ここのはな」

「ここのだけだよサキちゃん」とぼく。

「外はそんなに長くないわ」

「形がまた変わるな」とリョウ。

「さいしょからなかったんじゃない?」

「そうかもな」

「まだ一緒でよかったね」

「ああ」

「仲よくなれたよね」

「そりゃそうだよ」

「出れたら遊園地も水族館も行こう」

「そこはとじこめられへんところ?」

「こわいこといわないで」

「ここより怖いとこないわ」カツジがいう。

「ほんとにな」

「ほとんど思い出せなくなってるよね」

「なにが狙いかもわかんない」

「それもさいしょからなかったんちゃう?」

「もうここのこと考えんのやめたいな」

「そりゃむずかしいな」

「ずっと迷ってんねんもん」

「いつから迷っているんだっけ?」

「百年」

「死んでないの?」

「だから怖いんじゃないかよ…」


ぼくらの会話はとぎれない。

この四人でよかったかなと思う。

わるかったとも思う。

ひとりでさびしくてつい呼んでしまったことを。


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奇妙な夜の迷子たち 空想さん @kuusoubookclub

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