第11話『湯川という男②』

「ほんと、初日から手のかかる生徒やわ。」

言い放った途端に湯川先生の雰囲気が変わる。古今東西、多種多様な音楽からメロディーを抜き出したような不気味で、それでいてどこか華やかなそんな雰囲気へと変える。

「■■。君は私を敵に回した。いいね?」

刹那、コンマ数秒の出来事である。いつも通りの雰囲気に戻した湯川先生が手を払っている。まるでなにか汚いものでも触ったかのように不愉快に。

「こいつの力使うまでもなかったな。いいや。うん合格だお前ら。」

説明を求める視線を湯川先生へと送り、口を開こうとしたその瞬間、

「おいガキ。どうなるかわかってんだろうな?」

「口悪くなってるよ■■さん?」

「決戦と行こうか」

「決戦といこか」

そこからはもう俺たちの出る幕はなかった。湯川先生と誰かが戦いあってる音だけが聞こえてくる。

「あなたたちは逃げて。話は明日学校ででも。」

気づけば俺は自分の家にいた。これはあの幽霊の怪異の能力なのか。はたまた湯川先生の陰術なのだろうか。そんなことを考えながら俺は眠りにつくのであった。

次の日。ホームルームが終わってそうそうに湯川先生が声をかけに来た。

「相澤、齋藤昼休み相談室に来てくれ。じゃ午前の授業頑張れよー」

手を頭の腕プラプラと振りながら教室を出ていく。やはり、湯川先生は適当で強引だと思う。

「相澤はいいのか?どうせお前の事聞かれるんだろうが?」

「あー、言いたくないことは僕にもあるけど、あの先生なら黙秘とか許してくれなそう。」

相澤はどこか強ばった表情でそんなことを呟くのだった。

昼の授業をダラダラと聞き流し、板書をしていくと気づけば昼休みとなっていた。相澤と一緒に教室を出て数分歩いている。どうやら俺たちは迷子になってしまっているようだった。この学校は正直広すぎる。いらない施設も幾つかあると思うが1年後にはそんなことを思わなくなっているのかもしれない。

「俺あの人に聞いてくるわ」

ちょうどいいところに通行人が来ていた。俺も相澤の後ろを着いていく。

「すみません。ちょっといいですか?」

「大丈夫ですよ。」

通行人はちらりとこちらの首元を見た。そこで何を確認したのか頷いていた。

「相談室ってとこに呼ばれてて、どこにあるか分かりますかね」

「相談室かい。何したの?あんな場所に呼ばれるとか。」

先程とは打って変わって砕けた口調となっていた。先程確認したのは学年であることに俺はすぐに気づいた。俺もその人の首元、組章を確認する。そこには2Dと書かれていた。

「何もしてないんですけどね」

「そうかい。まあいいや。この先を右に行って突き当たりに階段があるからそれ昇ったらすぐ相談室だよ。」

「ありがとうございます」

「どういたしまして。やんちゃもいいがちゃんと勉強はしろよ。」

この先輩はいい人そうだな。そんなことを思いたがら言われた通りに道順をたどった。すると相談室と看板が出された扉があった。軽くノックをして向こうからの返事を待つ。

「入っていいぞ」

そんな返事が返ってきたのを確認し、扉を開く。

「「失礼します」」

2人の声が重なった。相談室の中に入ると湯川先生が真正面に座り、その前にふたつの椅子が置いてあった。俺は右側の椅子に座り、相澤は左側に座る。

「さて、お前らはどっちだ?」

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この世に蔓延る怪異共に大いなる夢を サイキック @syjl

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