第10話『湯川という男』

自身の震えを感じながらも、目の前の相手をしっかりと睨みつける。それから、相手は俺の隙を、俺は相手の隙を見つけるための攻防が数秒続いた。それはたったの一瞬のことである。自身の刃が白虎の強靭で強固な爪を受け止めた。耳を抑えたくなるほどけたたましい金属音の怒号となり、辺り一体に鳴り響く。俺は刃で白虎のことを押し返す。仰け反った白虎の懐に潜り込み、鎌を大振りで右上段から左下段にかけて振り下ろす。しかし白虎は仰け反った勢いを使い回転をして、俺に蹴りを入れてくる。その蹴りによって出された足の爪が俺の肉体をえぐりとった。右半身に元からそこに何も無かったかのような風穴を開ける。思考が回らくなる。意識が朦朧とする中で聞いたのは、確かに誰かの声であった。

【其は汝よりも上なるもの。】

意識が朦朧とする中でさえ、空間が凍りついたことを感じられる。右半身にできた風穴に御札が貼られていることに気が付き、意識も明確なものへと変わっていった。しかし、体は痛い。呪力を御札に流し込み、体の臓器や肉を造り出す。どうやら俺の体としぃの呪力は馴染みやすいようで少しづつだが痛みが引いていく。

「やられてんな。小僧ども」

新たな声が聞こえてくる。俺は地面に倒れながらもそちらを向く。そこには湯川先生がたっていた。

「おい、■■さん?何してくれてんの?おたく。もううちの生徒には攻撃しない契約やん?」

「そいつは違う。お前達とはそういう契約をしているだろ?」

「なるほどね。これのどっちかがあの件の例外なんか。まぁどうせ相澤の方やろうけど。けどなら齋藤を攻撃する意味がわからんのやが?」

「そいつは危険だ。■■の怪異の契約者だ。しかも悪逆非道のそいつにさえ力を貸している。」

「悪逆非道なんはそっちやろ」

そういいながら湯川先生は大地を蹴る。土埃がまい、その勢いのまま白虎の顔面に拳を叩き込んだ。白虎の顔面に拳は埋まった。その埋まった拳を先生は勢いよく抜く。しかしその攻撃をくらっても白虎は起き上がってきた。

「こいつらの前で使いたくはないんだけどなぁ。」

パチンと先生が指を鳴らし、怪異が現れた。それは先程退治した幽霊の怪異だった。

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