第3話 想定解① プラットホーム側が原作保護(とコミカライズ促進)を図るパターン。

 この数日、Twitter上でも繰り広げられている場外乱闘を見ていたのだが、「なろう等作者叩きYoutuber」の何が問題なのかについては、とびらの様の以下のツイートが最も端的に記してくれていると感じた。


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商業的に迷惑、ならむしろ未書籍化作品の方がダメージ大きいけどな。いや無料はどこまでいっても無料だろと思ってるかもしれんが、なろうというサイトはランキングから打診が来るのを知らんわけじゃあるめえ。

くだんの動画配信主は底辺からのスコップじゃなくランキングで読んでるようだし、


https://twitter.com/tobiranoizumi/status/1443362057764544517

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 なろう等のランキングシステムを喰い物にして叩くことがアクセス数稼ぎにはオイシイという状況が、ランキングに食い込める力量ある書き手さんにとってはマズイということ。


……ん?! これは、小説投稿サイトのランキングシステムに内在する問題なのか? そう思い、この1日ほど考えていた。……これは世に作家を生み出すことが期待されるサイトとしてマズイ事態なのでは、と。


 私はまとまった量の投稿をし始めたのは最近で力量はなくランキングに絡むことはできない。残念ながら文才乏しくとうの昔に成人なので、生計は他で立てている。業務内容は外資IT企業のプラットホーム運用側。プラットホームを運用する立場には、プラットホーム上で活動してくださる方々が快適に過ごしてくださるよう務めなければならない(そうでなければプラットホームは生き残れない)……と、少しプラットホーム運営側の立場で考えてしまったり。


 でも、やはり書き手の立場で考えるべきと思う。それも、ランキング上位等を介して、作家デビューしようとしている立場から。……私は外資にあと何年か魂を売った後は作家デビューしたいと妄想しているし。


 ということで、ガチな書き手の歴史を振り返ることから、ランキングシステムはいかに守られるべきかかか始めたい。

 高度成長期、バブル崩壊前の「文壇・文學界」では、老獪(たぶん)な編集者と若き書き手が伴奏して出版にこぎつける流れがあったという。他の時代もそうだったのかは知らないが。


 ガチ昭和なエッセイの冒頭を、以下に引用しておく。

出典 https://pdmagazine.jp/people/nakagami-kenji/


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エッセイ 担当編集者だけが知っている中上健次 第1回

「中上健次  兄弟のように」 高橋一清


中上健次さんと初めて会ったのは、私が文藝春秋に入社した昭和42(1967)年の秋であった。所属する文藝誌「文學界」編集部で、翌年一月号から詩の欄を設ける企画が通り、執筆の依頼であった。投稿誌の「文藝首都」に発表する中上さんの詩やエッセイに、粗削りながら、若者らしい力と新しさを感じていたからである。


会いたいと書いた私のはがきを握りしめ、中上さんは受付にあらわれた。中上さんにとって、出版社を訪ねるのも編集者に会うのも、初めてであった。私は中上さんを作家と面談するサロンに、ためらわず通した。


袖口のほころびたセーター姿の若者を、サロンに入れたことは、問題になった。上司から、サロンは若者のたまり場ではないとの注意である。私は、詩を依頼したことを告げ、このとき初めて上司に言い返した。


「中上さんは、必ず大物になります。十年後、二十年後を見ててください」

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 後の芥川賞作家、中上健次は当時21歳。この時代には、「文壇(?)」が作家を守り育てる意識があったということだろう。


 対して、近年。21歳の作家志望者が担当編集者がつくのは、出版社のコンテストの○次選考突破者あたりだろうか。ただ、50年以上の時を経て、「出版社」・「編集者」という存在は変化しており、こうした関係も今後は危ういかもしれない。

 それは、出版社自体の生き残りが課題となっているため。文字を中心とした書籍に得手としてきた出版社は特に。この手の出版市場の分析はググればいくらでも出てくるが、ここでは職業としての「小説家」の視点から書かれた以下 の記事を引用したい。


『本は売れているのか?小説家の現状と出版社の状況をデータから検証』

https://kuriyaso.net/work/writer/current-status-of-novelists/


統計情報からも本記事に書かれた以下の状況は明らかである。

>漫画市場は電子コミックの爆発的な台頭によって大きく息を吹き返しましたが、「小説」はそのような新市場を見つけられずにいます。


2010年代前半に全盛期を迎えたラノベ含め、「小説」の近年の売上は厳しい(「小説」が厳しいの今に始まったことではないらしく、↑の中上健次自身も印税収入では十分に食べていけなかった模様だが)。

 ※他サイトのラノベ売上状況をチェックすると、この2,3年のラノベは50万部売れると大ヒット作らしい。文庫か単行本かで印税は変わるだろうが、仮に50万部×40円~80円とすると、印税収入2000万円から4000万円。数年分の生活費……だろうか。


 こうした中、この1,2年のコンテストには、コミカライズ前提のものが増えている。小説出版前提の10万字縛りを外すコンテストも増えている模様。

 電子コミックはコロナ禍では成長市場。今後もしばらくも縮小しなそう。


 ということで、冒頭のマズイ流れを、皆が食べられている成長市場であるコミカライズ側が、ブランドイメージを守るためにコミカライズ原作を(時として弁護士を立てて)守ることに期待したい……小説サイドは予算が厳しそうなので、、

 ※プラットホーム側がすべき委細は仕事でもないので述べることはしない。

  ただ、プラットホーム運営者が社内に多くの弁護士を抱えるのはグローバルでは

  普通このと述べておくに留める。

 


 こう書いたとおりに、既存のプラットホーム運営者が対応してくださるかはわからない。ただ、「なろう」のエコシステムは世界的に見ても貴重なものであるらしい。あれほどの作家を集め閲覧数を稼いでいる小説投稿サイトは他にないとのこと……とするとカクヨムさんは世界2位なのかもしれない。


 この手の日本のエコシステムを国内企業が活かせないならば、いずれGAFAMなどのIT大手が、より快適で作者が守られているエコシステムを形成してくれるのかもしれない(過半数が小説サービス、コミックサービスやってるしね)。その時は、個人の書き手さんで無駄に煩わされなくない方々はより安全な方に移るのが吉かと。


 さて、これからの数年はどうなるのだろうか。


 以上、今回は、プラットホーム運営者の今後の経済合理的な対応面を考察した。次回は立ち返って、現在被害に合われている方含め、リーガル面での救済がありうるかを考えたい。

 私も自信なきまま書いているので、こんな手もあるよ的なアトバイスある方からコメントいただけますとありがたいです。

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語句・創作相談センターのような相談窓口は作れるのか? 十夜永ソフィア零 @e-a-st

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